夢みた週末 * イシノアヤ
イシノさんのカテゴリを作るべきか…。4冊目だしなー。どうして最近は、同じ作家さんの本が二冊同時に出るんだろうか。あれかな、つられて二冊買っちゃう心理を巧みに突かれているのだろうか。だって二冊あったら、なんかあんまり吟味しないで二冊買っちゃうもんな。木下さん時そうだった。一冊ずつ出てたら、あの名作、『幾千の夜』は手に取らなかったと思う。そう思えば、やっぱ二冊同時だとちっとは売上上がるのか。
こっちはOPERAのコミックスです。OPERAはたまに買うので、こっちは幾らか読んだ事ある奴が入っている。
あっちも面白かったけど、こっちも面白かったです。
表題作のシリーズが一番好きでした、凄く面白かったです。
このクマに恋する男の話は、『君に沈む * イシノアヤ』これの中に、ショートで入っているんですが、まああれを読まなくてもさして問題はないと思う。
以下ネタばれます。
恋などとうに成就してた * イシノアヤ
面白かった!今まで出されたイシノさんの話の中で一番面白かったなあ。
作品的には私は、君に沈む * イシノアヤ これの中に一番長く入っているゲイの子とその子の不倫相手が経営しているカフェの店員との話が凄い好きで、イシノアヤさんで始めて読んだのもこの話だったんですよね、雑誌に載ったのを読んだのが初めてだった。だったんですが、それ以外…というかそれ以降、ああいう感じの話を描かれたのを見た事がなくて、後はポエムっぽい短編か、椿びよりくらいしか見かけなかったんです、ルチルで描いてらっしゃるのなんて知らなかった。
このルチルの新刊読むと、あたしが一番初めに読んで好きだなって思った雰囲気が凄くあって、あ〜こういう感じだった〜と思い出しました。
凄い好きでした、もう切なくって。
しかし釈然としないものも残るんですよね。話によってはその先が読みたいのに〜ってのもあるし。
だけど気持ちはストレートで暖かいというのが、絵から伝わる印象とちょっと違うっていうか、そこが面白いなあと思います。えーとなんていうんだろう、ちょっとアートな匂いがする感じ…じゃないですか?そういうのって一定に分かりにくいとか、勝手にこっちで想像しろみたいな、語らない事がオシャレ!みたいな感じがあるような気がするんですけど、いやまあそれも好きなんですけどやっぱり白黒はっきりした恋物語が読みたいので私は。
でもイシノアヤさん、少なくともここに入っている話は、ストレートに男同士の一応恋物語…というか、慕う心みたいなもの…が表現されていて、凄く読みやすいです。
bassoとかもそうなんですけど、意外に読みやすいんですよね、分かりやすいしね。絵に惑わされがちなんですけど。
しかし私、こういう絵が凄い好きです。私昔から凄い多田由美さんが好きで、もう長い間ずっと好きだったんですけど、多田由美系ですよね、イシノアヤさん。なのでほんと、絵を見ているだけで私には相当価値があります。
表紙も本当にいいですよね〜この色使いとか、メガネかけた男の人とか、膝を抱えた髭面の彼とかさ…!
以下ネタばれます。
花は咲くか 1 * 日高ショーコ
凄い印象的な表紙。綺麗な若い男の人のアップで、視線に雰囲気があっていいです。何が始まるのか凄くドキドキする。
まだ1巻だし、何事も始まっていなくて、状況説明と、出てくる人たちを理解するのに精一杯な一冊だったので、これから先を読まなきゃまだまだ何とも言えない感じです。今のところドキドキする瞬間もないし、切ない瞬間もやってこない。とにかく続きを読まなきゃ何も始まらない気がする。
ただなんつうか、この雰囲気作りが本当に上質な感じがするのは…やっぱり凄いなと思う。主人公のサラリーマンのおっさん…って言ってもまだそんな歳いってる訳じゃないんだろうけど、やたらと疲れていて守りに入っているので、凄くおっさんくさい。この人の人生疲れっぷりっていうのが、言葉で説明してはいないのに、凄く伝わるんですよね、物語から。読んでいて自然と伝わる、この人が抱えている状況とか、背景。読んでて見えるっていうの凄いと思うんですよね、大した説明があるわけでもないのに。視線とか、物の考え方、諦め方に、この人自身が凄く表れている。
主人公のおっさんは、とにかく凄く人間らしかった。疲れていたり、お人よしだったり、意外におしゃべりだったりする。この人が戸惑ったり怒ったりイラッとしたりする瞬間が、凄くあのー…浮いてないっていうか、地に足がついている。現実的で、生きている感じがする。出てくる人、一人一人が全部ちゃんと人間らしくて浮いてないのが凄い。全員しっかり生きているし、都合のいいキャラがない。
雰囲気が凄くいいんだけど、決して雰囲気マンガじゃなくて、ちゃんと人としてのリアルを感じるんですよね、そこが上質だなあと感じるところだろうか。
…っていうかもう、絵が素晴らしいですよね…!
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見えない星 * 京山あつき
聞こえない声 * 京山あつき
なので久しぶりにこれとこの次に出たの二冊いっぺんに読み返してみた。
うーんやっぱり面白かったです。すーっごい繊細ですよね、気持ちが動くっていう事について。繊細だし、凄いリアルだし。恋ってこういう事言うんだろうなあって、じわ〜んと感じてしまうような。
戸惑いとか憧れとか、いじらしさが、物凄く生々しい。幼い気持ちが成長していく過程も、凄く赤裸々です。あと、一途に思う純粋な気持ちと、真反対にあるみたいなフィジカルな欲求っていうのか、そういうのって違う場所にあるんじゃなくて、同じ場所にあって、混在していて、だけど十代の子たちが一緒に扱うにはやっぱり2つの欲求は手に余って、そのあたりの微妙さ加減を凄くこう…リアルに描いてある。
出てくる男の子、受の子がかわいかったり綺麗だったりする子じゃなくて、不細工だけど凄く真面目な、あんまりBLマンガには主人公として出てこないようなタイプなんですよね、だから余計に、他人から向けられる恋愛感情や自分の恋愛感情に戸惑う気持ちが、誤魔化されることなく凄くリアルに響いてきた気がします。
がしかしやっぱり何回読んでも、今井先輩がカッコよくて、…カッコよすぎてなんか色っぽく、どうやってもこの先輩が受だったら〜………と、思わずにいられない。
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月に笑う * 木原音瀬
結局徹夜で、途中二時間転寝して朝まで掛かって上下巻読んでしまいました。
あ〜…もうどうして…?面白かったです〜。もうほんっと、なんでだろう?どうしてこんなに一つも文句がないのか分からない。首を捻ったり、疑問に思ったり、冷めてしまったり…という瞬間が全然やってこないんですよね。物語の途中で、自分に帰ってくる瞬間がないっていうか…もうほんと夢中で入り込んで読んでしまえます。
毎回そうなんだけど、出てくるこの子たちに、物凄く気持ちを沿わせて読んでしまうんですよね、ここに実際在るものに、疑問を抱かないのと一緒です。文章の中に存在している、生きている。
今回の本、号泣するような瞬間はやって来なかったんだけど、とにかくあのー…純粋で、痛々しくって、甘くって、切なかったです。
私は結末を闇雲に信じて読んでいたので…絶対に裏切られることはないと信じていた。だってこんなにお互いを思う気持ちにぶれがないんだから、そこだけはこんなに揺るぎないんだから、きっと報われる、きっと大丈夫な筈…と、いや信じていたというよりは言い聞かせて読んでいた。
私、木原さんの本、大部分読んでる筈で、勿論大好きです。一冊読むと色んな事を思うし、自分の事を顧みてしまうし、感情移入して泣いてしまうし、物凄く揺さぶられるし、引き摺られる。後を引いてしょうがない。
だけど、木原さんの作品に、何か強いメッセージ性がなきゃいけないのか、感じなきゃいけないのか、感じられないならつまらないのか…っていうと、そんな事全然全く違うと思う。木原さんなら一癖も二癖もあって当然、木原さんだからきっと奥深いはず、木原さんだから普通じゃつまらない、木原さんだから木原さんだから木原さんだから………ってね、読む前にたくさんの枕言葉をつければつけるだけ、感じる幅が狭くなると思う。勿体無いと思う。
それってBLにも言えるんじゃないだろうか、BLだからここまででいい、BLだからここから先はいらない、BLならこれを書くべきじゃない、BLならこういう展開にすべき。……って、BLという言葉にどれだけの制約をつけたら純粋に楽しめるというのだろうか。そうやって厳しい規制を掻い潜ってきた作品だけをBLと認めて、認められたものだけをBLとし、それだけを読みたいということだろうか。そこに残ったものって、どれだけ"BL"として素晴らしいの?
あたし、違うと思うな。
確かに木原さんの書くものは木原さんにしか書けないと思うよ。でもその、"木原さんだから"っていう先入観の前に、一個の小説として純粋に楽しみたいよな。
恋愛の話として、楽しみたい。純粋な気持ちが描かれてある事をまず感じたい。そして何か感じられたら、私にとってはそれだけで十分だとも思う。
この間の 『夜をわたる月の船』 なんてほんと苦しい話だったけども、その時も凄く思ったんですよね、感じた事が全てだなって。この小説を、どこかに分類して外側から決めて掛かることが、そんなに重要なのだろうか。自分にとって好きか嫌いか、面白いか面白くないか、そういう事で十分なんじゃないだろうか。それこそ、BL云々どうでもよくないですか?だからと言って別に、変に重苦しく難しく語る必要もないと思うんですよね、いけすかねえと思ったら自分には合わないって事だし、それでもたくさんのものを感じたなら、少しは意味があると言う事なんじゃないだろうか。
私はいっぱい色んなことを思ったから、それだけのものを貰っただけで自分にとっては素晴らしかった。あくまで、私にとっては。しかし、自分にとって素晴らしい、という事以上の何が必要かというと、いや何も必要じゃない。自分にとってどうであるか、という事が全てだよ。
今回読んでもつくづく思ったんだけど、私は木原さんの人間の書き方が、とにかく大好きだ…。
どうしてこうも、生々しいんだろうな。どうしてこうも、愛しいんだろう。人間って、生きている事って、やっぱりとても愛しいことなんじゃないだろうかと…そう思ってしまうような人間が出てくるんですよね。
これは『薔薇色の人生』でも思った。あの話の、モモもロンちゃんも、どうしようもなく愛しかった。思い出すと涙が出そうになるくらい、薄汚れていて、それなのに愛しかった。
なんかそんなような、愛しさを、山田にひしひしと感じてしまった。
山田と路彦二人とも、どんな局面に立たされても、自分の気持ちが揺らがない。
相手を思う気持ちとか慕う気持ちの部分だけ、物凄く純粋で綺麗だった。不思議なほどそこだけが、びくともせずにお互いの中にあって、だからどんなにヤクザたちの話でも、どんな事が二人の身の上に起ころうとも、一貫してどこかがとても甘いというか…甘いものをどこかに感じる事ができる。
単純に物語もハラハラして面白かったし、大人になっていく二人の状況や心の変化を、ドキドキハラハラして読むのも楽しかったし、やっぱり何よりとにかく、山田と路彦二人とも、愛しくてしょうがなかった。
どうかどうか、二人が寄り添って生きていけるようにと、本当に祈るような気持ちで読みました。
以下ネタばれます。
秘書の憂鬱 * オオヒラヨウ
右京さんが喋ってるのかと思ったら内村だった…!似過ぎ…!!
えーと、夕方10人↑くらいの方に見られてしまった記事ですが…。UPした直後に唐突に強烈に面倒くさくなってきて、インポートもうまく行かなくてかなりの記事が手作業で移さなけりゃいけないし、もうなんか…やめたやめたやめた…!!となりました。ので、記事も消しました…。面倒>金。という事に相成りました…。ので、見ちゃった方、忘れてくださいな。ごめんなさい…。
そんな事は置いといて、オオヒラヨウさんの新刊です。割と面白い短編が多いので、オオヒラヨウさんの新刊楽しみでした。まだたくさん出されている方じゃないので、一冊が貴重です。
今回のは真面目な秘書と強引な社長のラブが表題作で、こっちも読みやすくて割と面白かったんですが、それより私、同時収録が面白くて…!この同時収録は、『SとMの恋愛 * オオヒラヨウ』この本に同時収録で入っていた短編の、続編なんです。あの話が好きだったので、続編読めて嬉しかったです。
以下ネタばれます。
きら星ダイヤル * 夏目イサク
えらく可愛いタイトルなのでどんな話かと思ったら、田舎にやってきた医者と、心に傷を抱えている青年との恋物語でした。イサクさんらしく、明るく可愛くちょっと切なくて、面白かったです。
以下ネタばれます。
シグナル *日高ショーコ
で、『シグナル』はちゃんと感想書いてなかったので書き直します。
内容はバーのオーナーしている金持ちの道楽息子らしき綺麗な人と、地道なサラリーマンの恋物語です。
年上の人が我侭でマイペースでいつでも主導権を握っていて、年下のサラリーマンが振り回されまくっているという構図で、全体的に、サラーッとした話ですよね、なんか汗の匂いがしないというか。
日高さんは最近はそうでもないけど、やっぱ昔はですね、都会的に過ぎるというかね、もう出てくる人出てくる人皆オシャレ。スーッと綺麗なスーツで綺麗な立ち姿で、バリバリ仕事してて当たり前みたいな人がいっぱい出てきてて、きっとそこはもう、日高さんの昔からの拘りなんだと思うんですよね。そういう男が好きなんだと思う、本当に昔っからそうだもん。恋愛に汗の匂いがしないの。貧乏臭さもない。スタイリッシュで小奇麗で、出てくる人みんな高給取りっぽい。品がいい。その品のよさがファンタジーっぽくなくて、現実的だっていうのが、日高さんの魅力でもあると思うんですけどね。出てくる人が全員高給取りなマンガはいーっぱいあるんですけど、それらにないリアリティが日高さんのマンガにはあるよね。だからこそ、現実的な匂いがするからこそちょっとイラッと来るというか…。あ、イラッとしちゃダメなのか。でもそんなの今更なので言う、ずーっと好きで昔から読んでるけど、そういうとこに同じくらいずーっと小さくイラッとしていたので。ぷちっと。
まあでも、このシグナルの後に、『嵐のあと』→『知らない顔』→『憂鬱な朝』って出るんですが、そういう拘りみたいなもの…が、いい具合に解けたんじゃないかと…偉そうですが、一ファンとしてね、そう思うんですよね。幅が広がったって言うか…だってほんと私、『憂鬱な朝』とか読んだ時びっくりしたんですよね、こんなの日高さん描くなんて…!って。日高さんのマンガについては、憂鬱な朝1 * 日高ショーコ このあたりで散々語っているのでもういい加減しつこいよね、やめよう。
『シグナル』は、そんなブルジョワジー好きの日高さんの、日高さんらしいマンガだったと思います。
このー…出てくる金持ちが全員なんとぼっちゃんぼっちゃんしている事か…。そんな中で一人、サラリーマンの村上が健気なんですよねえ。でも正直者でとても素直な男なので、逆に金持ち連中にはとっても興味深いようで、大した特徴もないこの村上という男を、みんな気に入っていく。
なんか面白い話ですよね、こういう話も日高さんしか描けないように思う。
ラブミースルーザナイト * 紺野けい子
なんで今これかというと、ちょっと前に拍手頂いたのが切っ掛けで久しぶりに読み返してみたんですが、やっぱ最高に良くて、えらい泣いてしまったんですよね。やっぱちょっと感想書き直したいなあとずっと思っていたんです。解放感に溢れている今(一仕事終わったから)、書き直すことにします。
これがいいのは別に、今も昔も変わらず良いんです、何回も泣いてはいるんです。が、前はやっぱりどうしても、受があまりなタイプ外だったので、心の底から認めにくいというか…。私その辺の拘りがどうにもこうにも半端じゃなくってですね、何事にも神経質なんですがこういう事にも物凄く神経質なんです。
が、このブログをはじめてから、まあ受が黒髪チビでもストーリーがよければ全然心の底から面白いと思えるくらい、許容できる範囲が格段に広がりまして、そういう頭でこれを読むと、もう何に引っ掛かっていたのか全然分からない。本当に心の底から面白かった。
★を4にしている自分が許せなくて、書き直して5にしたくてしょうがなかったんですよ、これでやっとできる。
あのー拍手を下さる方の中に、BL初心者の方が割といらっしゃって、それが本当にここ数ヶ月という初心者さんが多いんです。ここを参考にして下さっているとのことで、ほんとありがとうございます。
そういう、初心者で何を買ったらいいか見当がつかない〜と言うのを聞くと、なるほどな〜なんて思ったりして。この間感想書いた『月とサンダル』とか、この紺野けい子さんもだけど、今BLを書いてないけど、当時絶賛大人気で、超名作たくさん描いてらっしゃった作家さんの本とか、あたしら的にはもう今更語ってもなあ…くらい慣れ親しんだ方たちで、私も好きで読んでて当たり前、みたいな感覚で感想すらちゃんと書いてないんですが、ここ数ヶ月で嵌った方たちには、きっと出会う機会がないですよね。それ考えると、古い本の感想書くのも割と、自己満足ってだけじゃなく、役立つかもしれないな…と思ったりして。
えーと初心者の方々、紺野けい子さんは名作が多いですよ〜!
以下ネタばれます。