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夜明けには優しいキスを * 凪良ゆう

ずっと読みたくて読む時間なかったこれを、旅先まで持って行って読みました。
面白かったので夢中になって読んだんですが、好きか嫌いかと言われたらあんまり好きな話じゃないかも。というのはもう、読んでてしんどいから。なので★を4にしたんですが、でも凄く真摯な小説でした。
しんどいので進んで読もうとは思わないけど、読めば当然色んな事を思うし、凄く入り込んでしまうし、必死になってしまいますよね。凪良ゆうさんの小説を、まだ3冊しか読んでないんだけど、…好きです、この方。文章も好きだし、未完成とかもそうだったんだけど、正論を、恐れずに逃げずにストレートに書かれるところが、凄く好きだなあと思う。カッコつけた感じがしないんですよね、凄く誠実な感じがします。で、それらの正論が浮かないのは、言っているキャラたちにある程度の人間味があるからだろうと思う。腹の底から言っている感じがする。


以下ネタばれます。





内容は、過去の事で自分自身に重い罰を与え続けている男が、今の恋人に激しい暴力を振るわれていて、それに気付いた年下の男が、この人を救い出そうと手を差し伸べる。その手を掴みたいのに掴めない、自分の中の罪の意識と、自分を殴り続ける男との間で苦しみながら、優しい男に恋をしてしまうという…誰かに恋をすることで、自分を信じてくれる人が現れたことで、もう一度自分が罪だと思っている事と向き合い、自分を殴る男と向き合おうとする主人公の、心の軌跡が誠実に丁寧に描かれている話…。

まあとにかく、辛い話ですね、なんか八方塞でね。何が辛いって、塞いでいるのが自分自身なんですね。
主人公の要は、自分は過去に重い罪を犯したと、その事で自分を責め続け、どうしてもそこから先へ進めない。誰かに自分を罰して欲しいと思っている、そうでなければ生きているのが辛いから。
そんなところへ現れたのが加瀬という暴力男。この男は本当に理不尽な話ですが、一方的に好きになった要の元へ押しかけて殴って殴って犯して殴って、無理矢理自分の恋人にしてしまった男です。本当にひどい。加瀬は口では要を愛しているという、愛しているのに答えてくれないから殴ってしまうという。何言ってんだって話ですけどね、そんな大事な人を殴るような愛情、これっぽっちも信じられない。加瀬にどんな生い立ちがあったとしたって、同情はしない。
要は、まるで自分の罪を贖うように、加瀬に自分を殴らせ続ける。好きでもない男に抵抗せず、逃げずに、自分で自分を痛めつけ続ける。
そんな要の毎日に、バイト先の同僚で年下の公平が現れる。この人はとにかく正論をはっきり自分の口で相手に伝える男です。自分の権利を声を上げて主張できる。とても強い男のようだけど、でもこの人はそうしないと立っていられないんだと思う。それがこの若い男の生きる術なんだと思う。公平は、要の様子がおかしいのに気付いて、そのうち要が恋人に暴力を受けている事にも気付く。要は誰にも自分に関わってほしくないし、自分の状況を変えようとも思っていないので、初めは公平を避けているし、何かと構ってくる公平が鬱陶しい。だけど、誰にも助けて欲しくないなんて、そんなのは要が自分の心に言い聞かせている方便で、助けて欲しいに決まっているし、殴られ続け、自分を責め続ける毎日を、平然と受け入れられる訳がない。心は誰だって柔らかい。要は日に日にギリギリの状態まで疲弊していく。それを公平は放っておけない。公平は、放っておいて欲しいと言いながらも、いつも苦しそうで、いつも泣きそうな要に、要は暖かい手で自分を檻の中から連れ出そうとする公平に、少しずつ惹かれていき、やがて二人は恋に落ちるんだけど、要は自分が恋をするなんて事を自分自身に許してやれない。自分は絶対に幸せになってはいけないと、強く自分を戒めて生きているので。でも、恋心はなくそうと思ったってなくせるものじゃないから、恋をすれば相手からの連絡を待ってしまうし、声を聞きたいし顔を見たい。諦めなければ、止めなければと思いつつも公平に強く恋していく要の様子に、加瀬は敏感に気付く。そして、加瀬の暴力はエスカレートする…。

という話です。
あー…しんどい。

とにかく読み終わって思ったのは、"負の連鎖の断ち切り方" …みたいな小説だったなあという事で…。
あたしはいつも思うんですけど、DVを見聞きする度に、この負の連鎖が終わる事はあるのだろうかと。どこかで断ち切る事はできるんだろうかって。終わる日が来るのか、それはとてつもなく遠い、気の長い話じゃないのかなって。殴る方は完全に心の病気で、しかも圧倒的に自分は心の病気だから治そうなんて自覚はない。今目の前にいる相手がなんとかして逃げたとしたって殴る方が殴らないでいられない自分の病を治そうとしない限り、今度は別の相手が暴力を受ける。延々被害者はなくならないじゃないですか。それを考えると、なんて気の遠い話だろうって思うんですよね。先がない、答えがない、結末はやってこない。物凄く暗い気持ちになるんですよ、解決策がないような気がするんです。
なので考えたくない、辛い。こういう話も読みたくない。

で、これを読み始めた時に、これDVの話だなあと思って、凄く嫌だなあと思ったんですが…でも途中で止めたくはないので、最後まで読みたい。どうせ読むなら、どうせこれを書くならば、…ここまで真摯に描いてくれるんなら、断ち切り方まできっちり描いて欲しいと切に願いながら読んだんですね。殴る方が、今後絶対に殴らない、なんらかの精神的な脱皮というか、解放というか…殴る方がなんらかの解決を見ないと、読んでるあたしも解放されないでしょ。そこまで描ききって貰って初めてあたしの中では完結できるんだと思う。

この話だったらとにかく問題なのは加瀬でしょ、殴ることをやめられない。どれだけ主人公が自分の中で答えを出して、前へ進めたからって、加瀬が執着している限り、自ら命を絶とうが警察へ捕まろうが、絶対に主人公は解放されないじゃないですか。死なれても苦しむ、束縛されても苦しむ。何をされても苦しいんですよ、加瀬が解放されない事には。読んでても、この問題を安易に終わらせられない、自分の中で。それが一番DVを読む上で気が重いところです。

一見絶対解決できないように思えるんだよね。あんなひどいことを他人にできる人間を、ちょっとやそっとの覚悟で他の人間がどうにかできるもんなのか、とあたしは凄く疑問で、でも一方では、最終的にどうにもならない人間は絶対に存在しないということも信じている。どんな人間でも、生きている間のいつかの時点で、どこかの時点で、自分のやってきたことを省みる日が来る筈だって事も、なんか信じてるんですよね。でもその、いつかのどこかの時点がいつでどこなのか、加瀬のような男が人を殴らないようになる為に、一体どれだけの時間が必要で、どれだけの人間が傷つかなければならないのか。それを考えるとその道のりは、あまりに遠くて険しいように思えるし、それに関わった人間の精神的負担を考えたら、やっぱりあまりにも無理な気がするんですよね。だけどどこかの時点で加瀬が人に愛されて、大事にされて、自分を愛してやれない事には、負の連鎖は終わらない。

そういう事をですね、DV問題を考える時にいつも暗い気持ちで考えるんですね。
この一冊で加瀬をどうにかできるのか、あたしが納得する結末を迎えられるのかてのがすごい不安だったんです。そうでないなら読みたくないからね。読めば勿論、加瀬に殴ることをやめられるようになって欲しい、要に好きな人と幸せになって欲しいって強く思うし…。
でも読んでいると、凪良さんの誠実な文章とか、人の気持ちの奥底をきちんと書くとこ、何よりさっきも書いたけど、正論をカッコつけずに、恐れずに真っ直ぐ文章にされていて、その文章を読んでいくうちに、この人は負の連鎖の断ち切り方まできっちり書いてくれるのではないだろうか、という期待が沸いてきたように思います。
中途半端ではない、主人公が幸せになることだけではなくて、加瀬が一歩を踏み出すところというのが本当の結末だと思うので、ちゃんとそこまで。

とにかく一冊かけてずっと、逃げずに真正面から描かれてましたよね、正論だけど綺麗事を並べ立てている感じはしなくって、それよりも誠実さを感じるというか。…要という人にはなんでそこまで…とたくさん思いはしたんだけど、やっぱりこの人には絵空事の空気がなくて、醜くみっともなくも何とか必死に生きている感じがして、公平もまたなんでそこまで正しいのか、と思いはするけど、この男にはちゃんとリアリティがあったと思う。誰もにちゃんと人間味があって、だからこそ、苦しかったし、痛々しかったし、辛かったです。

加瀬をどうするのか、どうなるのか。要が加瀬を選んだとき、一番そうなって欲しくない、だけどそうなるであろうという選択で…辛かったなあ。あたしはなんか…やっぱりどうしても、他に好きな人がいる状態でどれだけ一緒にいても無駄だって、心は絶対に偽れないという思いがあるんですよ。なので要の選択を正しいとは絶対に思いたくない。他人のために生きるなんて無理だし、間違っていると思うから。
だけど、要の選択は、明らかに自分の為だよな。それを自分の贖罪のため、自分が前へ進むため、というなら理解はできる。加瀬に折り合いをつけない事には、要は前へ進めなかった。あのまま公平と付き合っていても幸せになれなかっただろうと思う。その後の加瀬の変化を考えても、要が加瀬を選んだことは、間違っていなかったのかもしれない。今に立たないと過去の選択の是非はわかんないからね。
結局自分に誠実でいることを選んだことが要の未来を作ったのかもしれない。

加瀬が本当に嫌な男で、愛してるだなんてどの口が?と思っていて、それは最後まで思っていたんですが、加瀬と要の、ラストあたりの短い穏やかな日々、ほんの少しだったけど、その間の加瀬の状態を見ていくうちに、これがあたしの望んだ負の連鎖の断ち切り方…で、ありえるのかもしれない…と少し思えました。実際、ここまで歪んだ形でしか要に接することができなかった人間が、たったの数ヶ月でそんなに変わってしまえるものなのか…もしかして、加瀬を変えたものは、私は信じないと言ったけども、要に対する本当の愛情が、心のどこかに強く強くあったからなのか、加瀬の中で要に対する愛情が何より勝ったからなのか…と思えてきて、…そうだったらいいなあと思ったし、きっとこの物語の中では、加瀬が誰かを本当に愛せた事が、変わる切っ掛けになったのかもしれないって思えました。要が他に好きな人がいるにも関わらず、自分を信じて加瀬の側に居続けた事は、加瀬にとっては、何かを信じる事に繋がったのかもしれない。
要の背中を抱いて眠ったり、手を繋いで眠ったり、帰ってこない要をそわそわと待っている姿は、あまりに哀れで、切なかった。愛されなかった幼少期を経て、愛し方が分からなくなってしまった男、子供のような男…。大事な人を、そんなに好きな人を、殴り続ける事しかできなかったなんて。

要は最初から最後まで、自分が悪かった自分が悪かった、何もかも自分が悪かった…って言い続ける男なんですけどね、まあそういうのは自分の心の問題なんですよね、誰を悪者にして自分の心の平穏を保つかっていうのは。昔の事件の事は公平の意見に賛成ですけど、加瀬の事は加瀬にほとんどの責任があると思うけどなあ。確かに、人と人が関わっていくうちに、片方が100%悪い事はないって私はいつも思うし、信じているんですけども、加瀬の度を過ぎた暴力まで要の責任にはしてしまえないよ。要が自分を責めるのは、要が自分を納得させるために必要な事なんだと思うけど、ただ、加瀬の暴力は、加瀬自身に問題がある。殴らせた、と思っているのは要だけで十分で、要が殴らせていなくても、加瀬は殴っただろうと思うから。だって始まりからしてそうなんだし。

まあだけど、何があろうとも、要は絶対に公平と幸せになるべきだと信じて読んでいたので、本当に終わり方にホッとしました。
こんなに苦しんだんだから、せめて好きな人と、せめて幸せなセックスをして欲しいじゃないですか。
最後あたり、え、もうエッチすんの!?ってまた思いはしたんだけども、まあいいですよね、公平も長い事我慢していたんだから。
公平のいう事がほんと素晴らしく潔くってですね、最後に公平が「一回でも誰かに全力で抱き締めてもらった人は絶対に強くなる」って言うんですね。だから加瀬さんは幸せになるって、要を安心させるように断言する。でもあたしこれ、凄い共感するんです。私もいつもこう思うから。誰かに本物の愛情を注いでもらって、それを感じることができたら、他人も愛せると思うんですよ。愛された記憶って絶対人を強くするでしょ。
ほんと、そうだなって思った。これは綺麗事じゃないと思う。実際、本当に、そうだと思う。そういう形のない、一見不確かな事が、人間を変えるんですよ絶対に。
負の連鎖を断ち切る為に何が必要か。この公平の一言が、答えかもしれない。

この小説の中ではあたしは勿論公平が一番好きです、要も加瀬も全然好きじゃない。でもここまで読んだら、要にも加瀬にも幸せになってもらいたい。
加瀬の再生の物語を凄く読みたいと思うんですけど…そんなありえないの…!?凄くありえそうなのに。
そうなるとまた加瀬はたくさん傷ついて苦しむだろうけど、でもそれを乗り越えて、今度は好きな人を殴らない恋愛をして欲しいじゃないですか。
加瀬の話、形にならないだろうか…。

まあそんな風に色々考えはしたんですが、全然キュンと来るような小説ではなかった。少し泣いたけど、ほとんど泣かなかった。
ただ、一生懸命読みましたよ、色んなことを考えた小説でした。

あ、最後気持ち良さそうなのが本当によかったなあって思いました。




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Catergory in [novels]凪良ゆう comments(0) -

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