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ジュテーム、カフェ・ノワール * ヤマシタトモコ

面白かったです。短編が幾つか載ってて、二つくらい切ないものがあって、泣いてしまった。
その他のも、どれも割と好きなのもあったけど、そんなにインパクトの残るものもなかった。
というのはやっぱり、これまで同じような話を何度も読んだ気がするからです。

描かれた年月は去年だだっと出されたそれぞれの短編と被っているので、この本が出るのが少し遅かっただけなんだと思うんですが、既に似たような話を何度もしつこく読んだ気がするので、新鮮味があんまりないんです。
似たような話を何度読んでも好きだし面白いって思える作家さんもたくさんいるんだと思うけど、それが何でいいかっていうときっと、自分の中の果てない欲求を満たしてくれるからじゃないだろうか。…例えばあたしだったら、死ぬほど年下攻が好きじゃないですか、年下攻以外絶対読まねえ!!!と長年言い張っていたくらいの筋金入りの年下攻め好きなんですね、その好き加減にはきっと限度がないよ。そんなあたしに例えば夏水りつさんが何回似たような年下攻描いたとしても、私その度毎回泣けると思う。…という、分かった、ここにあるものが"萌え"という奴ですか?萌えって何なのか分からないから、使い方が分からないんだよなー…。でも、ここにあるものの正体が"萌え"なのではないだろうかと、今書きながら気付いたんですけどどうですか?
それがあるから、同じものを同じように何回出されても満足しているんじゃないだろうか。
でも、ヤマシタさんのマンガには、それがないと思う。それはないけど、それとは違うものは多分にある。ありすぎるほどある。しかもヤマシタさんのマンガにあるものは他にはない。

なんかー…きっと難しいところなんだよなー…あまりに個性が強かったり…特にヤマシタさんの話は全部、二人の人間の関係性を描くところに終始していて、物語が動かないじゃないですか。頭の中を穿り返したり、人間性を覗いたり、過去を覗くことで、気持ちの結論を出す、或いはその一瞬を描く。人の気持ちを描くというところに終始してる気がするんですよね。
その徹底的な刹那主義というか、今、この瞬間のリアルを!この瞬間に内包されるその人自身を!みたいな…。それがきっとヤマシタさんを鮮烈に見せていたところの一つでもあるんじゃないかと思うんですが、…でもそれって、案外簡単に慣れてしまう…の、かな…。

でも、私はそういうマンガを読むときや考える時にいつも思うんですけど、世の中にはとにかく大勢の人間がいて、その人たちは一人一人性格も違うし考えたかも違って、好きなものも違う。1000人いたら1000通りの恋の話がある、だから、特別なシチュエーションでなくても、事件が起きなくても、人の生き方、過去、性格、その人の人間性を掘り下げるだけで、1000通りの恋の話ができる筈だって、いつも思うんですよ。
だから、例え、まったく二人が動かないマンガでも、描き方や見せ方によって、出てくる人の性格によって、絶対に一つ一つの個性が生きる、面白いものが描けるはずだって思うんです。…理想ですけど。
でも実際はきっと限界があって、書く人も人間で、どんだけ大勢の人間がいても書く人はたった一人で、自分のたった一つの感性で描くしかない。…ここに一人の人間が描く創作の限界があるのかなー…とか思ったりするんですけどね。

もう何の話をしたくて書いてたのか忘れた。
…なんだっけ?
あ、えーとそうだ、新鮮味がなかったなあ、って話だった。なのにえらい大袈裟な話になってしまったな。
でも、新鮮味がないって、凄い言われたくないじゃないですか、凄い嫌な事言ってるなあと思って、なんでそんな事言うのかっていうのに言い訳をしていたら、長話になってしまった。

感想書く前に疲れたけど、以下ネタばれます。




例によって私は、一話目と二話目みたいな話があんまり好きじゃないです、それはもうどのコミックスを読んでもそうなので、私の好きじゃない話には、一定の同じ何か癖みたいのがあるんだと思う。
だけど、好きだっていう感情、この一言を、色んな角度から、色んな表現で、何とか形にして伝えてくれようとするそのスタイルは好きです。
じゃあ何がイヤかって言うと、何がイヤなんだろう?あ、ちょっと分かった。"好きだ"という感情を、色んな表現や表情で伝えてくれようとはしているんだけど、……だけど、その割には伝わってきてない。って、とこかも。ここにある好きって感情は、まるで真実味を持ってズシンと響いてこないというか…。形だけは何とか描いてあるけど、中にあるものがよく分からない、見えないって気がするんですよね、実のない殻を飾り立てている気がしてしまいます。
そういう雰囲気のする幾つかの短編が、あんまり好きじゃないんですね、面白くない事はないけど、あたしはやっぱり、ずっしり重い、実を掴みたいというか…まあそんな感じです。
…とは言っても、この一話目の扉絵なんか、もうブルっと震えてしまうくらいステキですよね〜本当に、絵が好みすぎて…男の人たちの風情が本当にいいですよ、綺麗に痩せていて、視線が渇いているというか、カッコいいなあと思います。

3話目、傷つけた男と傷つけられた男の再会。
高校時代、傷つけられた男の絶望がえらい苦しかったです、幼いって残酷だ。傷つけた奴の方は、そんだけ長年人の心に傷をつけといて、好きだなんて一言で片付けられちゃ困る…!と、読んでいる方は思ってしまうんだけど、でもそれを引き摺っていた方は、いまだに夢に見るくらいその事を忘れていなかった。どんだけ連れ去って欲しいと願っても、UFOなんかやって来ない。その記憶は忘れられないし、それを覚えている自分はここであの記憶とともに生きていかなきゃならない。そういう状態のこの人にとって、加害者のたった一言の謝罪と好意は、救いになるのではなかろうか。
結果的に、二人が幸せになればいいんだよな。それまでの5年10年を、後で振り返って、あの時はこうだったなあって、笑って話せる過去になれば、傷は癒えているということだし、そのうちなくなるかもしれない。被害者にとっても加害者にとっても。
でもいきなりキスしていいかなんて、調子に乗りすぎ。

ねむの木の話。
これが何だか泣けた〜…。凄い切なかったです。近所の人に後ろ指を指されながら一人きりで生きているゲイの男ってだけで既に切ないじゃないですか。大歓迎する必要もないけど、後ろ指指す必要もないじゃんかよ。この、ふら〜っとした頼りなく儚い男の人が、もうあたしには魅力的に見えてしょうがなかった、こんな人誰かに一緒にいてあげて欲しい。こんなガキでしかも女じゃダメだよ何の支えにもなりゃしない、男だよ男、恋人!
なくなった恋にしがみ付いている大人…ほんと寂しいです、寂しいけど情けない。
この人をこの家から出す為には、女の子供でよかったのかもしれないね、この人にとっては気負いのない相手なんだし。

食事を毎日作って食わせる話。
これも泣いた…。切ない、こんなのどうすればいいの。
わかってて食っていたのか、お互いに。分かっててそんな関係を続けていたのか。
いずれ結婚するなら、気持ちに答えてやれないなら、なんでそんな残酷な関係を…と、これも傍から見れば思うけど、食事を用意するゲイにとって、それは苦しくも幸せな恋人との逢瀬であり、通ってくるノンケのほうにしてみれば、大切な親友の為にできる唯一の事だったのだろうか。
あ〜切ない。やだなー…。でも面白かったです。

電車の話は、ただただ、車掌室をあんなにじいーっと見つめているシーンに凄い笑った。あんだけ見つめられといて知らないふりをし続けているシチュエーションが凄いおかしかったんですよね、無理だろ。
で、これからこの二人に先はあるのかな。あるといいなあと思うんだけど。

表題作はあんまり好きじゃなかったけど、髪の長い男が好きだったなあって言うのと、純喫茶の夢が意外になかなか効いてて面白かった。
短髪の方にぜひに抱かれて欲しいと思うんだけど、ノンケの筈の男に好きだとせっかく言われた事に対しての感慨はないのだろうか。恋が成就して喜ばない奴なんかいるのだろうか、そういうとこ、作りすぎるんじゃなくてちょっとだけでもいいから、じわっと揺れる心が読みたいと思うんですよね、そうすればきっとこの話も、もっと好きだったと思います。
そういうもの、と思えばいいのかもしれないんだけど…この中にある関係、どれ一つとっても何だか、とても嘘くさかった。

という訳で、好きなのもあったし好きじゃないのもあった、という感じで…なんだいつもどおりですね。
いつもどおりだった事に安心しました。

あそうだ書き忘れ。書下ろしがいつものようにありがたく面白かったです、これがなきゃ嫌なんですよね、結構フォローしてあると思うし。
ねむの木の話なんて救われたなあ…。でももうちょっと実現しそうな男好きになって欲しいわ。
純喫茶を夢見ている男、やっぱ凄い可笑しい…。




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Catergory in [comics : や]ヤマシタトモコ comments(4) -
Comment
ヨルコ says : at 2010/05/19 20:36
yuuumingさんこんばんは、コメントありがとうございました〜。

いえいえ全然そんな事ないんですけど拙い日本語しか書けなくて恥かしいくらいで…。

ヤマシタさんの作品、そうなんですよね〜。このジュテーム…を読んだ時に私も、あ〜…なんか全部凄く今まで読んだ感じ…と思って。
っていうのもやっぱり、ストーリーを書かないからかなと思ったんですよね。

一時期いっぺんにたくさん出すぎちゃいましたもんね〜。
独特の個性も、あれだけ立て続けに出ると、飽きてきちゃうのかもしれない…。
難しいですね…。

私も久しぶりに読み返してみようかなあ、そうしたら凄く新鮮に感じるかも。

でもやっぱりヤマシタさんの本に出てくるやせて疲れた男の人はずっと大好きなんですけども!
yuuuming says : at 2010/05/18 14:20
>二人の人間の関係性を描くところに終始していて、物語が動かないじゃないですか。頭の中を穿り返したり、人間性を覗いたり、過去を覗くことで、気持ちの結論を出す、或いはその一瞬を描く。

まさにその通りだ!と思いました。
ヤマシタトモコ作品を読んでるときに感じてた、
独特さってこれですね。
すっきりしました。
(ヨルコさん、すごいですね。
マンガの特徴をぴたっと表現されてて…
いつもすごいなぁと思います)

ヤマシタトモコ作品、一時期はまって
これでもかこれでもかと買ってたんですけど、
だんだん飽きてきたんですよね。
きっと最初はヤマシタトモコ作品にしかない独特さが
目新しくておもしろかったんだけど、
読んでるうちに慣れちゃったんだな―と思いました。

久しぶりにこの作品を買ったんですが、
久しぶりに読むと、やっぱり新鮮に感じることができておもしろかったです。

他のBLの合間合間に読むのが一番おもしろいのかも…
ヨルコ says : at 2009/07/31 18:32
こんばんは〜コメントありがとう!

共感してもらって嬉しいです、ヤマシタさん読むと色んな事思うよね、でもヤマシタさんしか描けないマンガだと思うから、ぜひこれからもBL界で頑張って欲しいなって思います。
奈緒子 says : at 2009/07/30 22:58
こんばんは。
ヨルコさんの書いてることものすごくわかります。私も同じように感じました。かなり頷いてしまいました。
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