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きっと恋に違いない * 西田東

これより前に一冊西田さんの本出てたんですよね、見過ごしてて買い忘れてたんだけどこの間買って読みました、そっちもめっちゃ面白かった!
その感想も書けたら書くとして、まずこの本。
やっぱ面白かった〜!

西田さんのマンガっていっつも出だしが独特の雰囲気で面白いよね。何が始まるかわからないっていうか、色気がなくて、音がなくて、どんな色なのか想像つかないんだけど、ただ無性に奇妙な、ユニークな雰囲気があるから、きっと面白いだろうってやけにわくわくするの。映画が始まる時の無音の部分っていうか、そういう感じ。
いつもそう感じるんだけど、今回も凄くわくわくした〜。

表題も面白かったけど、私同時収録のAV男優の話がもうめっちゃ面白くてドキドキハラハラして好きでした。


以下ネタバレます。

 


表題作は同期のサラリーマン同士、それぞれ違う課の課長同士で、特になんとも思ってないっていう二人の男がひょんなことから意識し初めて…っていう話で面白かったです。

自分の写真が大量に入った牧野のPCを見てしまう佐々木の動揺っぷりがとにかくおかしいですよね。目が点になってる最初の顔。その顔があまりに間抜けで笑っちゃった。コミカルですよねえ、表現が。変顔してるわけでもないんだけど…なんか笑っちゃう、おかしい、西田さんの描く表情。
それから牧野が自分のことを好きなんじゃないかと思い、意識していく過程がまたリアルというか、戸惑いに鬼気迫るものがあって、その真剣っぷりがまた笑える。
まあ、薄々勘付いてはいたけど誤解なんですよね。それがなんとなく分かるだけに一人右往左往してる佐々木が余計おかしい。
でも、その右往左往の中に、ちゃんと佐々木の心の揺れとか、牧野へ向かう気持ちも見えて、まんざらでもないっていうのもわかる。どうなるんだろって期待しながら読むのがほんと楽しかった。

で、あれこれ焦ったりドキドキしたりしている佐々木の前で、牧野と言えばとてもナチュラルで、これがまたいい奴なんですよ、もの凄い自然体で。あんまりにもいい奴なんで、牧野に惚れそうになっちゃうんだよね、読んでても。だから、佐々木が牧野の言動にきゅんと来たり、ドキッと来たりするのが理解できる。
佐々木が誤解してたって事に自分で気付く頃にはもう、佐々木の気持ちは後戻りできないとこまで来てたわけだけど、驚いたのは牧野の気持ちも動いてたってとこよねー!!
やっぱさ、好かれていると思って意識しているとその気持ちに流されてこっちも好きになっちゃうことがあるし、相手が恋愛の気持ちでこっちに接していると、なんだかこっちも引きずられちゃうってことなんだよね。
このお互いの気持ちの流されっぷりが絶妙ですよね、読んでてこりゃしょうがないかって思うもんね。ナイナイ…って冷静にさせないもん。流されてあたりまえ、みたいな雰囲気まで持ってってるとこが凄い、だって最初本当に何とも思ってない同期同士で、お互いゲイって訳でもないんだから。よくぞこの色気のなかった仲に恋愛感情を無理なく入れてくるなあって…西田さんそこらへんいつも凄いけど、今回も凄かった。

で、この二人、最初は牧野が抱く気で佐々木は抱かれる気だったのが、関係が本物になってくると、自然と佐々木の方が抱く気満々になっているのが面白かった。性格や立ち位置や思いの強さなんかで、セックスの主導権も変わっていくってのが、リアルよね。なんかなんとなく…ノンケ同士って感じがする。

同時収録のAV男優の話。
これ面白かったー!!!私、西田さんのこういう系の、緊張感ある話がすっごい好きなんだよね。男二人の間にある緊迫した空気描かせたら凄いよね西田さん。緊迫感の間に紛れもないなんかこう…執着っていうか、色気が見えるところが凄い。ドキッとするんだよ〜。
そんでそんだけの緊張感の中で、ふとした瞬間に、あっという間にもの凄いスピードで、その二人が恋に落ちていたりして、そのスピードに違和感がないんだよ…!気付いたら自然に恋愛関係に陥っていて、さっき緊張してたから尚更、その甘い関係にもの凄い入り込んじゃうっていうか…ドラマチックに見えるの。
ストーリーテラーなんだよな〜。演出家っていうか。ほんと、読ませるなって思います。

この話のゲイのAV男優、エロいよね〜。めっちゃ色っぽくて、男臭くて、言動も鋭くてキツいし柄も悪いけど、でも悪い男の匂いはしない。とても人がよさそうで、とにかく凄く魅力的じゃない?
一方はクソまじめに肩肘張っているエリート。エリート意識の塊みたいな、鼻持ちならないところもあって腹も立つけど、でもこの人も一生懸命。正しくあろうとしすぎていて不憫なくらいで、エリート意識っていうのも、強いてそうであろうとしているみたいな…紙一重のところで、そんな自分、そんな人生を常に裏切りたいと思っているような…、なんかそんな危うさのある人なんだよね。
そういう人間の書き方が凄く面白いし、うまいですよね西田さん。
とにかくこの官僚も悪い人ではないと、読んでいたらわかる。

AV男優に脅迫されるようにして二人の関係が始まるんだけど、その関係もなんだかこう…形が決まってないって言うか、脅迫している方もされている方も、自分たちの立ち位置に迷っているというか、きっとこういうことがやりたいんじゃないって自分たちに惑いながらも、近づき方を知らなくて、間違った方向で繋がろうとする。
結局は相手自身に興味があって、お互いに期待して、忘れられないんだと思うんですよね。きっと最初の時点で強烈に相手に引きつけられてる。
そのあたりのやりとりとか、気持ちの行き交いがほんっと絶妙じゃない?凄い緊張感、お互いに罵りながら、離れることもできるのに、相手から離れようとしない。

エリートの方、もの凄い堅物だったし頑なな男に見えたから、この人は自分から折れないだろうと思ったけど、意外にもこの人は恋心を自覚して、心が通い合わない関係に傷ついて、ちゃんと自分からこの関係を新しくしようとする。
そんな強さを持った人なんだと思ったら凄く意外だったし、感動した。
最後泣いた。
あんなカッコつけてたのに、AV男優の方はヘタレだったね。覚悟決めたらエリートの方がかっこよかった。
でもそんな二人凄く素敵でした。言葉だけがずっとすれ違ってた二人が、最後やっとお互いの姿を見た気がして、感動したな。AV男優のサングラスの下の目、優しげだった。道路のシーンは、下品なのに妙に爽やかなのが不思議よね、味わい深いね。

最後、ベッドの上で二人抱き合ってるシーンもとってもよかった。エリートとか、AV男優とか、そういうのを全てとっぱらった、ただの恋人同士に見えて、きっとそれこそ本来の姿って感じがしたよね。
いい話だったな〜。




 

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Catergory in [comics : な]西田東 comments(0) -
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