ダブルミンツ(CD) * 中村明日美子
『空と原』と一緒に出た『ダブルミンツ』のCDです。
こっちは同級生シリーズと打って変わって、明日美子さんの真骨頂とでも言いますか、複雑な感情が入り組んだ、暗いエロスの香りがむんむん立ち上る話です。
原作の感想はこちら→ ダブルミンツ * 中村明日美子
勿論、勿論原作が大好きなんですよ。
なので全く迷いなく購入したんですが…なんとみつおが野島裕史さんだったんですね〜…!
たぶん演技ではいっちばん好きな声優さんなのです。それがあんまり頭に入ってなくて予約したので、キャスト改めて見て、おおっと思ったよね。
これ私、幾らでも原作に付いて言いたい事があるっていうか感想がやまないんですけども、複雑な話なので、これをどうやってCDにするのだろう、分かりにくいんじゃないだろうか…と思っていたんですよ。
で、私は原作の場面やストーリーが頭に入っているので、聞いてても何をやってるかよく分かったんだけど、原作知らない人はやっぱりわかりにくかったんじゃないかなあ。どうだろ?
以下簡単にネタバレながら感想です。
その、分かりにくかったんじゃないかって話だけど…特に原作の、最初の方。
女を殺して埋める、その時に指輪を一緒に埋める、帰りに怖気づいたみつおを、ミツオが車の中で襲う、下僕のように傅いてきた犬が突然反抗する、立場が一瞬逆転する………という、中々に肝なシーンなんですけども、ここ、分かったかなあ?
今までミツオを支配していたみつおが、突然飼い犬に手を噛まれて、動揺して自分の立ち位置を危うくするんですよね。この一話目は、みつおとミツオのこれからと今後を象徴する、凄く重要なシーンがたくさんあるから、やっぱり原作読んで聞いて欲しいなあと、原作ファンからしたら思うよ。
あと、過去の話がはしょられてるから、ミツオが高校時代、苛められながらもみつおに性的なものを感じて彼を抱きたいと思っていた事は描かれてないよね、察する事はできるけど、やっぱり二人の確執に付いてはよっぽど頭を働かせないと、この複雑な共依存の関係は分かりにくいんじゃないかなと思った。一方的にみつおがミツオを痛めつけているだけみたいな関係になっちゃうと、この話の良さが出ないもんね。
ミツオはみつおに苛められて散々ひどい事をされてはいるんだけど、そうされながら、自分の存在意義みたいなものをみつおに見出してもいて、彼がいるから自分がいるみたいな考えに、高校のときも、再会したあともなっていってて、それが間違ってるのか正しいのか分からないけども、ミツオの中では間違いなくそれは正しいんだよね。で、みつおは本能的にそれを察して、ミツオが求めている程度の物を、ミツオに与えていた。
決して一方的な関係ではなかったから続いた、支配し、支配される、という関係だった…。
と、言うとこがこの話の面白さだと私は思うので、何回も言うようだけどやっぱり、CDのみの人は原作読んで欲しいと思うよね…。
けど、こんな分かりにくい話をドラマにした割には、凄くよくできてると思ったんですよね私。
鬼気迫る空気感とか、何が起こるか分からない怖さとか、得体の知れなさとか、よく出てたと思うんです。聞いてると、ダブルミンツの空気が凄く伝わってくる。暴力シーンとか、なんか凄いリアルだよね…。本当に痛そうで、心臓ばくばく言う…。
で、やっぱり野島裕史さんがとにかくすーっっっっごくよかった。
この人が凄いと思うのは、いつも言ってるけど、何を聞いても前聞いた声、って言う感じがしないところ。何を聞いても、そのキャラの声に聞こえて、前聞いた誰々の声、という思い出し方をしないんですよ、だから常に凄く新鮮。いつ聞いても、この声凄くいい、誰??って感じで、何度もハッとさせられるの。
空と原に野島健児さん出てたけど、やっぱ似てるよね、なんつうか…喋り方。演技は違うんだけど、喋り方の存在感が似てるなっていつも思う。けど全然違うんだよなあ、野島健児さんは何を聞いても野島健児って空気を凄い出してるけど、裕史さんの方は、役によって違う存在感を出してると思う。
どっちもとっても稀有な声、稀有な演技力だなあって思うよ、本当に凄いね。
けど、どっちも好きだけど、どっちかと言われたら、やっぱり裕史さんのが好きなんだよね、あらゆる役を熟す感じが…声が変わるわけじゃないのに、色んな色に染まれるところがやっぱり好き。で、どれも色気のある声だよなあ…。
でね、今回のみつおくんはね、私はやっぱりこれ聞くと、野島裕史さん…ではなくて、みつおくん!!なんだよね。みつおくんの声、として聞こえるんですよねちゃんと。役に物凄く自分を近づけるタイプの役者さんなのかなあ、凄いよね〜。
みつおって横暴なちんぴらなんだけど、凄く純真というか無垢というか、やってる事は結構ひどいんだけども、何も知らない赤ん坊みたいなまっさらな部分を持っている感じがするんですよね、原作の感想にも書いたけど。
だから、みつおくんは怖いだけでもダメだし、ワガママで色っぽいだけでもダメで、やっぱり子供みたいなところ…がないと、私の中でみつおはみつおじゃないんだよね。
でもさ、ここで野島さんですよ。この方のみつおは、何も知らない無垢で小さい、ミツオにとってだけの王様だったよ。
こんな男は特別でも何でもない。ただのちんぴらに過ぎないんだよ。だけど、ミツオにとっては大事な王様で、大事な半身だった。ミツオにとってだけの特別な純潔を持ったみつおって男…野島さんが演じると、みつおはこれ以上ないほどみつおだったなあ…。
やっぱりこれでいいんだ、みつおはこれでいいんだって、原作読んで思った私のみつお像に答えを貰ったような気すらしたよ。本当にぴったりで、絶妙なみつおだった。
怒鳴り声も、暴力をふるうところも、受けるところも、黒田さんにエロい事をされている時も、みつおのあのエロい顔が思い浮かんでくるようで、この野島さんの演技を聞けるだけでも、このCDの価値があると思うくらいです。
断髪式の野島みつおくん、…エロかったよね…!
こうしてますますこの人を好きになってゆくのですね…。
で、ミツオの方ですが、正直ちょっと演技しすぎている感じがするなあと思わない事もなかったんですよね、不自然というか、この暗い空気を喋り方に出しすぎている…と感じる部分が初聞きのときは結構あったなあ。
でも、何度か聞くうちにあんまり気にならなくなってきたかな。
最初はミツオも何考えてるか分からない不気味さがあるんだけども、回を追っていくごとに、ミツオの考えている事が分かる。するとミツオに人間味が出てくるんだけど、そうなってからのミツオの演技が凄く良かったと思うな。
お風呂エッチとか凄いよかったな、「ダメだ、みつおくんが壊れちゃうよ…」が、とてもよかった!
あと佐伯さん…。佐伯さんの声がめちゃめちゃよかったですね、もう雰囲気出しすぎててエロくて怖くて、凄い味があった。ガツっと作品にパンチを与えてましたね〜。
分かりにくいかもな…ってのはまああったんですけど、原作知ってる私なんかには、結構満足できるCDでしたよ!やっぱ声優さんたちの演技が凄くよかったから、それを聞くのが癖になるというか、ゾクゾクすると言うか。
各役どころがきっと難しかったであろうと思うだけに、演じる声優さんたちの力を見せて貰った気がしますよ。明日美子さんのあのエロい怪しい空気を醸す声、よかったです。
そして私はますます野島裕史さんを大好きに…。
だってここにもまた、聞いた事のない野島さんがいたんだもんな。
毎回毎回聞いた事がない野島さんです。本当に凄い!
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