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白のころ * 三田織

これ、この方!初コミックスなんですけども、雑誌でこの方の短編を一つだけ読んだ事があって、それが凄く心に残るよい作品だったのです。なので、この一冊を凄く楽しみにしてました。

そしたらね…やっぱね、めっちゃくちゃよかった…!!
もうめっちゃくちゃよかったですよ、すっごくよかったですよ…!!
なんかこう、80年代のマーガレットコミックスみたいな…って言うのはその頃子供だった私が物凄く心酔して好きだったものでついこんなふうに言ってしまうのですが、そんなような繊細さと優しさと可愛らしさがあるんですよね、よい意味で昔の少女マンガみたいな感じでした、すっごく優しくて感動した。
絵も、岩舘真理子さんみたいな儚さがあって、だからと言って消えてしまいそうな程儚くもないんですが、でもこう…絵の端々から優しさが滲み出るというのかなあ、冷たさも勿論あるんだけど…だからこそ冷たいと凄くグサッとくるんだけど…でも冷たさの隣にもちゃんと優しさがあるというか…嘘がないというか、やっぱ心をちゃんと描いている気がするなあ。

凄く暖かくて切なくて、繊細なところがぐぐっと来るよいマンガでした。


以下ネタばれます。





表題作は思春期の田舎の中学生の話。
これがほんっとによかったんですよ、他にもいい話いっぱいあるんだけど、これも本当にとてもよかった。
太一は田舎の中学に通う純朴な少年。太一の学校にある日都会から転校生がやってくる。藤は背が高くてカッコよくて髪の毛も坊主じゃないし、都会の匂いをぷんぷんさせた男の子。太一ははじめ藤に気後れしているけども、話してみたら藤はいい奴で、二人はあっというまに仲良くなる。
二人でじゃれあうようにいつも一緒にいて、太一は藤のことが大好き。だけどある日、藤に突然キスをされてしまう。初心すぎる太一は、驚きはしたけども、そのキスの持つ意味が何なのかさっぱり分からない。結局スルーすることにしてしまうが、その頃学校で、藤と太一はできていると噂を立てられる。そんな噂を立てられるのが嫌でならない太一。藤の事は嫌いじゃないけど、戸惑ってしまって藤の事を避けてしまう。そんな時、藤が卒業したら元の横浜の学校に戻るという話を聞いて、思わず藤が居なくなる事を喜んでしまう。嬉しそうな太一の顔に、藤の表情は曇って…

という、何も分からない子供の気持ちが徐々に大人になる、思春期の一瞬を優しく可愛らしく、しかし棘も含ませて繊細に描いた名作なのですよー!!
ゲジゲジ眉で本当に田舎の子供と言った太一の風貌も凄く飾ってなくて味があっていいんだけど、都会からやってきた藤の、太一より先に大人になっているもどかしそうな表情も凄くいいんですよね。
太一が物凄く純粋な気持ちで、ただただ藤の事を好きでじゃれつくんですよね、屈託がないんです、まだ全然子供なの。けど藤のほうはもう自覚のあるゲイなんじゃないかと思います。
田舎だと、都会から来るこういう子ははじめ凄く倦厭されるから、そんな時に話しかけてくれた太一、本当に心の支えだったと思うし、大好きだったと思うんですよ。
で、思い余ってある日キスしてしまう。けど太一は何だか全然分かってない。卒業したら前いた場所へ戻ると告げたら、寂しがるどころかホッと嬉しそうな顔までされて…。
藤は深く傷ついたと思う。凄く残酷なんですよ、この太一の、自分の気持ちを把握できない幼さが。

太一には何の悪気もないんですね、藤との間にあらぬ事を言われて、どうしたらいいか分からない。これまでそんな事を考えた事もないんですよね。それを、できてるとかホモとか言われて、嫌で嫌で仕方がない。藤に会うのまで嫌になってしまう。藤の事が嫌いな訳じゃないのに、藤と一緒に居ると自分は突然、これまで立った事もないような場所に立たされてしまう。知らない場所に立つのは怖い。その怖さに名前をつけられない。藤の気持ちを理解できる許容量が、太一に全然ないんですよね…。
すっごく残酷なんです。
横浜に戻ると言われてホッとした笑顔を見せる太一と、そんな太一を見る藤の顔がもう、切なくて…。

別れる間際に藤はちゃんと告白するんだけど、でも、太一の気持ちが自分と違うのは分かってるって言って、明るく誤魔化すんですよね。太一は何か凄く藤に、気持ちをぐっと募らせながらも、それがなんなのか分からない。藤が傷ついている事も、藤が自分を好きだと言う気持ちにも、ついていけない。ただ何だか切なくて寂しくて、藤へのもやもやした思いだけははっきりとあって、ただただ、ごめんって謝るしかない……。
切ない、切なすぎる…!!!

しかもこのお話のいいところはここで終わらないところなんですよ…!!
卒業して別れた彼らは数年後、大学生になって再会するんですよ、再会した二人がちらっと見れるのが、読者思いの何とも心憎い演出で、優しくキュンっとくるところなんですよね〜!
しかもあんなくりっくりした子供だった太一が、ちょっとカッコよくなってますから〜!成長してますから…!!!
んで書き下ろしのオマケで彼らのその後もちゃんとあるんですけど……なんですか、この私にお誂え向きのシチュエーションは…。成長したのちの体格逆転バージョンってどうしてこうもウマイのでしょうね!
成長して藤と再会した太一が、雪の中で藤に言った言葉。
よかった〜…。ほんと感動的だった…。
ほんっと名作でした。
ところでこの方言は広島かなあやっぱ?わしねぇ〜…って男の子が言うのがめっさリアルだった。

その他にもよい話はたくさんあるのですが…中でもサラリーマンと大学生の話。
これがもう…泣けて…。切なくて切なくて、えらい泣いてしまいました。すっごくよかった。
クリスマスに彼女がブランド物の高い財布を欲しいと言ったから、その為にバイトを探していたあおい。ある日路上でいきなり真面目そうなサラリーマンに声を掛けられ、時給4千円で、自分の話し相手にならないか?なんて突拍子もない申し出をされる。彼はあおいのことが好きだと直球で言った。
気持ち悪いが、時給4千円に引かれて、やばそうなら逃げようと決意して、指定された場所に行くとそこは彼の自宅。睦彦さんという彼は、自宅で年老いた祖母と二人暮らし。何がなんだか分からぬまま家に上がって、本当にただほのぼのとおしゃべりをして、お金をもらう。こんな美味しいバイトだなんて…!と、週に何度かあおいは睦彦さんの家に通うように。
睦彦さんの家では本当にただ毎日、話をしたりテレビを見たり、年賀状を作る手伝いをするだけ。睦彦さんは人がいい。ばあちゃんには優しい。素直で、あおいのことが本当に好き。
楽勝なバイトだと思っていたけども、そんな事を繰り返しているうちに、あおいの良心は痛み始める。
そんなある日、あおいは街中で睦彦さんと出くわしてしまう。あおいの腕には、財布を欲しがった彼女がぴったりとくっついていて…。

という話なんです。
これがもう、すっっっごくよくて泣けたんです〜…。
だってもうこのストーリーだけで泣けるし!
大して好きなのかどうかも分からない彼女の為に学生で金もないのに、5万の財布を買おうとするあおいと、その学生の彼氏に5万を平気で強請る彼女。アホかと言いたいですが、そうするもんだという思い込みでこんなことができてしまうというのがもう、全くわからない。
脳みそを使ってないんだと思うわ。まあこんな事は珍しいことじゃなくて、脳みそを使わない方が楽しい時期というものもあるだろうと思う、若い時には。私だってあった、深く考えたり、いちいち人の心を考えたり、慮ったり、自分の行動の意味を考えない方が楽だと、楽しいと思う時が、人生にはあるかもしれないです、ない人もいるかもしれない、しかし私には浅はかな時代があったように思います。まあ、私は子供の頃から金の価値観にだけは煩いんですけどもね…。

とにかくそんな脳みそ使ってない状態のあおいがある日突然見知らぬ年上の男に告白される。
時給4千円で話し相手に…ってまあ、援交ですね。
あおいが脳みそをきっちり使っていた学生なら、こんなバイト話には乗らないと思うんです。睦彦さんの真剣さに、気付かないにしても、汲み取ったとしても。話をして4千円を貰うという行為に、何か自分を律するものをなくしてしまうというような恐ろしさを、感じてもおかしくはなかったと思う。あおいがアホだから、金につられてこんな話を受けたんだと思います。
しかし、そのアホさに睦彦さんは救われる。断られて当たり前のこんな話に、あおいは乗った。

睦彦さんっていうのがこれがまた…ほんっとうにお人よしで、仕種態度の本当に可愛らしい、平凡なサラリーマンなんです。ばあさんと二人ぐらしで、ばあさんにとても優しいです。定食屋でバイトしてたあおいをずっと見ていて、一緒にいたくて、一世一代の賭けに出たんです。ゲイで、自分には普通の恋愛はできない。だから、お金を出して、好きな人に一緒に居てもらおうと考えた。確かに浅はかかもしれないけども、こうするしか誰かに側に居てもらう方法がないと言い切ってしまうこの人は、あまりに哀れで、切なく、痛々しいです。
あおいが彼女といるのを見たのに、見てないと言い張る。あおいが離れて行くかもしれないのが怖くて、時給を上げようかだなんて言い始める。
こんなにも間違っていて、不器用で寂しく優しいこの人の恋を、応援せずにいられようか?いや、いられまいーっ!!

なんっとも切なくて、胸がきゅうううってなるようなお話でした。
あおいの心の底に、誰かの必死を受け止める部分がちゃんとあってよかった。優しさがあってよかった。睦彦さんへとちゃんと動く、心を持っていてくれて、よかったです。
いつまでものほほんとしている睦彦さんもよかった。この人が傷ついた顔をしないでいてくると嬉しい、ホッとできる。かわいい。
ばあちゃんも可愛い。
三人ほのぼのと、コタツに入って仲良く過ごせますように…。
泣ける…。

それから、これが私が初めて読んだ三田織さんのマンガだった『まほうのおくすり』という短編。
これが本当に岩舘真理子さんみたいに印象的でした。儚げで優しい雰囲気なのにどこかに絶望があって、しかし最後には希望があって、ほんわりとした気持ちと、小さい棘を貰うような短いお話なんですよ〜。
ちょっと読んで〜。

あと幾つかお話入ってるんですけど、ほんと全部いいです。
凄くいいです。
ご自分のカラーがあって、心に残る短編を描かれる方です。優しさも染みます。可愛さも、繊細さも。

っていう訳で、私は三田織さん、オススメします!




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8/4〜6
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以上の記事と携帯とサイドの拍手ボタンから拍手を頂きました。
たくさん頂いてどうもありがとうございました!

憂鬱な朝の記事にたくさん拍手して頂いたんですね〜。
ヒコさんの記事にもたくさん頂いて、ありがとうございます!
いつもいつも本当に嬉しいです。

今日は『リンゴに蜂蜜』のCD聞きましたよ〜。
感想はまた今度…っていつになることやら…。できるだけ早めに…でも私、8月はこれからガツッと忙しい時期に突入しまして…どうしましょう?
頑張りますー…。





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Catergory in [comics : ま]その他 comments(0) -
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