南美隆輔の傲慢な正餐 * 深井結己
漢字だらけ。
深井さんの新刊ですが、やっぱ読ませますよね〜。すっかり入り込んで読んでしまったし短編どれもとても面白かったです。
…けど、しんどかった〜…。
設定がどれも最初っから厳しいので、もう死ぬか生きるかみたいなことになってきてて、読んでてしんどいったらないんですよね。
愛か憎しみか死か…!!みたいな昔のレディコミみたいなのって、なんかもうしんどくって…なかなかハラハラドキドキを楽しんで読むって訳に行かないんですよね、心がしんどい。
でも深井さんは昔っから本当に変わらない!そしてクオリティもずっと変わらなくて凄いと思う。
で、この本。
これ表紙とタイトル見て、南美隆輔のなんとかかんとかっていってこの絵だったんで、私はもう絶対探偵か刑事が事件を解いてくもんだと勝手に思い込んでいて、…だってなんか二時間ドラマっぽいじゃないですか〜。
なので、スカーッとカッコよくて傲慢だけど包容力のありそうな攻男が難事件を解決しつつ受子を攻めるんだ!新しい!ワクワクする!
…と、大して根拠もないのに思っていたのですが、蓋を開けてみると何の事はない…何の事はないっつうのも失礼な話だけども、いやまあ、普通のいつもの深井さんだったよね…。
私が勝手に勘違いしていただけだけども、でもこの表紙とタイトルもいつもと違うしさあ、なんか南美隆輔って二時間ドラマの主人公っぽいよね…?
…つうか私、どんだけあらすじ読まないの?作家買いにも程がある。
ってまあ思惑は外れたのですが、これはこれで面白かったです。
南美隆輔は刑事でも探偵でもなく、ヤクザでした〜…。幼い頃からよくしていた若い弁護士とのあれやこれや…といった感じでした。
あと同じヤクザモノのスピンオフに、時代モノの男娼の話と、従者受の話と、『俺はあなたの犬だから』のスピンオフ、という内容。短いけど全部凄い濃いです、なんかもう、苦しかった〜…。切ないを通り越して苦しかった。
以下ネタばれます。
表題作は、ヤクザと若い弁護士の話。
この若い弁護士は、父親がヤクザの顧問弁護士をしていた関係で幼い頃から南美というヤクザを慕っていて、父親が死んで色々あって、今また自分もヤクザの弁護士をしている。
という設定で、父親が死んだ原因は?とか、組同士の抗争云々とか、結構ややこしくシリアスな背景はあるんだけども、この話他のに比べれば凄く甘い話だったよね。
幼い頃、南美を慕っている子供の目や思いが、いじらしくて可愛かった。この人大人になった後もなんか頼りなくて、とにかくいつも一途に南美を好きです…!って顔してるんですよね。本当に頼りない風情だった。そんで南美さんがやっぱりカッコいいんだよね〜。若い時のやんちゃな感じもカッコよかったけど、歳をとった南美もカッコよかったなあ、渋くって。ひたすら頼りなくて可愛らしい受と渋いおっさん攻。あんまり好きなパターンじゃないけど、深井さんなら面白く読める。なんでだろう、面白かったです。
で、この話のスピンオフが次の話で、南美の組の若頭って組長の息子なんだけど、この人と若い叔父の禁断ラブって感じで、ま〜…痛々しかった…。
この人たちがヤクザじゃなくて、もっと未来を信じられる関係と、状況であったならば、綺麗で若い叔父さんを好きになる甥の話って私本当に大好きなんだけども、ただもうあんまりにも痛々しいじゃないですか〜…。
好きすぎて苦しい片時も離れていたくないこのままじゃダメになるからってなんで次に来るのが死なの〜?いや、そりゃ理由もあるんですよね、この綺麗な叔父さん、生かしといても攻のお父さんにいずれ殺されるだろうという、立場的な危うさがあるんだよね。
だけど、それだからこそ余計にやるせないじゃないですか、この人一体何の悪いことしたの、可哀想過ぎてキリキリする、辛い。こんな優しい人なのに、生まれのせいで憎まれて一生日陰暮らしでさ、好きな人できたと思ったら自分の甥で、せっかく好きで幸せなのに、悲しい性のせいで離れなければならず、そうでなければ殺して欲しいだなんて……そんな究極過ぎる愛情、理解できない〜…。
…ほんと死んだのかと思って物凄い衝撃受けたけど、死んでなくてよかった。一応ハッピーエンドなんだろうけども…痛々しいわ〜…。気持ちいいっつってんだからいいんだけどさ〜。
死ななかっただけでもいいけども、物凄くモヤモヤする終わり方でした。攻の人も大概かわいそうだったけど…まあ、二人とも離れずにいられたんだからいいのか…。
男娼の話。
これがまた…もう可哀想で可哀想で可哀想で痛々しくて痛々しくて…私SM嫌い〜。
昔平気で読んでたのが信じられない。もう縄とかヤダ!痛い!
しかも体の痛みだけならまだしも、好きな人が目の前にいてさあ、心は何倍も何倍も痛いよ。
本当ににっちもさっちも行きそうにない状況で、お先真っ暗って感じでさ、苦しいったらなかったです。
そんでしかも初めが心中失敗みたいなとこから始まったじゃないですか、そりゃもうアンハッピーを予想して読むので、悲しさ辛さにも拍車が掛かり、あ〜ヤダヤダヤダ…と思いながら読んでたんですよね。
けどまあ、なんとか細い糸一本で繋がりましたよね、希望がね。
でもそれまでの不安と、バッドエンドの予感と、これから先の彼らの行く末がとても平穏とは思えない事で、心底安心とは行かなかった。なんか今後、もっともっと苦しい事が待っているんじゃないかと…あんな細い体で遊郭から逃げても、すぐ病気とか怪我で動けなくなるんじゃないか、食うにも困って路頭に迷うんじゃないか、男二人で逃げても噂が噂を呼んで二人が安心して暮らせる場所はすぐに追われてしまうんじゃないか………と、悪い事ばかりがさささっと頭に浮かんで、どうにも未来を信じられなかったです。
あれですね、こういう時代背景で、こういうものを読んでも、無邪気に安心して読み終えられる時代をとっくに過ぎて、どうせうまく行かないのではないか…と、不安に感じてしまう知恵だけを、歳とともに蓄えるのですねきっと…。
せめて少しでも長く、彼らが二人で幸せに生きられますように。
それから外国のぼっちゃんと従者の話。
これ面白かった!私は従者受が好きなので…この場合正確には近侍。でもまあ大きく言えば従者でいいよね、側に傅いて常に主人に慎ましく仕えながら、しかし心の底では主人を慕い、主人も彼を慕っているのに、立場の違いからそれをはっきりと態度に出す事ができない。がしかし大人になり、軍に入った主人は、とうとう溜まりに溜まった気持ちを打ち明けて………って、リー様〜!!
リー様の事を思い出してしまった…!(無二の王)
勿論リー様とは無関係ですがとにかく、そういう話が好きなのです〜。でもハッピーエンドでなければイヤです!
この話の受は我慢しきれずに自分の思いを主人に打ち明けてくれたのでハッピーエンドでした。
よ、よかった…。
冷たい顔をして主人を拒みつつ、がしかし最後の最後で自分の気持ちを隠しとおし嘘をつき続けることができなかった。主人に打ち明けてしまうんですよね、は〜よかったです、ひたむきに求める主人の態度や言葉や視線も凄く熱っぽくてよかった!
んで最後に入ってたのが『リトルウイング』
『俺はあなたの犬だから』のスピンオフなのです。感想は既にここに熱く書いているので、よろしければどうぞ→ リトルウイング(麗人2009年9月) * 深井結己
俺はあなたの〜が本当に辛い終わり方だったので、こういう形でその後が描かれて本当によかったと思う。こうなって初めてあの話は結末を迎えた…と思う。この人を側に置く事で、このお兄さんも少しは救われるかもしれない。そんでこの二人の間に何か愛情のようなものが生まれたら、二人とも生きやすくなるんじゃないだろうか、少なくとも、好きな相手が目の前にいれば生きていく原動力になるだろうから。
という短編集で、一個一個本当に重苦しかったです。
が、面白かったです。深井さんならではでした。
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25、26日
秋山くん * のばらあいこ 恋する暴君 7 * 高永ひなこ 2011年に発行されたBL本の中で、あなたのベストな3冊を教えて下さい。 部活の後輩に迫られています プレミアコミック本 * 腰乃 2011年アクセスランキング 不測ノ恋情 1 * 富士山ひょうた ボーイズラブファンへ100の質問(11年2月)
以上の記事と携帯と、サイドのclapボタンから拍手を頂きました。
どうもありがとうございました!
うわ〜…27日…。
毎日ここでカウントダウンしては((´д`)) ブルブル…っ(出てきた)てなっているのですが、えーとえーとどうしよう〜落ち着いて〜…。
今日24日の新刊が届くと思うんだけど、よ、読めるかな〜…。
27日の新刊たちはもう東京で買うよ、きっと読めないけどもどうせならなんかペーパーがついてるのを買いたいから〜…
とかそんな事はどうでもよくって、東京に行く前にやっとかないといけないことが山ほどある気がする、けどもう猶予は今日と明日二日しかない〜!あれ、サークルチェックは友達んちで前日にやるの、友達のカタログで…。そんで秋葉原、今回こそ行こう。こないだあきばごときを面倒くさがって結局行かなくて近場にしたんだよね〜。でも今回こそは行く!行こうよ!
ところでアンケート、答えてくださった方々、ありがとうございます!
ホントにホントにありがとうございます!
とってもワクワクしながら拝見しております、嬉しいです〜!
引き続き募集中ですので、ぜひぜひぜひぜひ!
ご協力よろしくお願いいたします!
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