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こめかみひょうひょう * 雁須磨子

昨日書いた『猫が箱の中』と同時に出たもう一冊の方です。こめかみひょうひょう……って、なんのこと?まあ何のことでも全く気にならないんですけども、こっちは数年前の須磨子さんの絵が多かったです。猫〜の方は割と最近の絵だったんですけど、こっちの表題作は2004年。結構前ですね、絵が微妙にまだ綺麗なんですよね、この頃のって。

そしてその表題作ですが……号泣!!!!泣〜い〜た〜…もうほんっと泣かせるんですよ、いじらしいやら切ないやら、なんつうキュン度。今度こそキュン殺されるかと…。
いや〜もう何とも言えません、素晴らしすぎて。人を好きになる気持ちのままならなさというか…いい思いもするけど、苦しいじゃないですか、想う事って。相手が自分を同じ温度で好きでいてくれたら、その時は幸せだけど、そうでなかったならば苦しい思いの連続で、でも苦しいことが分かっているからと言って、人を好きになるのをよしやめよう、と思ったって止められる訳もなく…本当に恋心はままならないですよね…。

本当にいじらしい気持ちの連続で、これでもかこれでもかとブスっブスっと心を串刺しにされてしまいました。こんなにのほほんと描かれているのに、何故こんなにもリアルなんだろうなあ。ほんと妙にリアルですよね。どうしてこんなにも身につまされるような、真に迫った心具合を、どうしてこんなにまったりと…描けるのだろうか。雁須磨子さん、ほんと尊敬してしまう。もうこうなったら同人誌全部引っ張り出してきて雁須磨子祭を一人で開催したい…!

以下ネタばれます。



表題作は高校のクラスメイト同士の話でした。
橘高はクラスメイトの芳野の事を密かにずっと好きでいる。彼の姿を携帯で隠し撮りしては、彼の姿を携帯に閉じ込める。打ち明けることのできない、叶わない思いだから、せめて携帯の中だけにでも、好きな人を閉じ込めて、それで満足しているような日々。
そんなある日、学校で携帯がなくなってしまう。真っ青になった橘高の携帯を拾って届けてくれたのは芳野だった。実は、携帯の中にいっぱいだった筈の芳野の写真は、前日にPCへ落としていた。だから、橘高の気持ちは芳野にはばれていないはずなんだけど、芳野の態度は意味ありげで、お礼をしてくれと言って、強引にファミレスに連れて行く。
そんな事があってから、これまで見るだけだった芳野と、仲良くなる橘高。緊張したり、ドキドキしたり慌てたりしながら、芳野と友達づきあいをしているある日、芳野が橘高の家へ来ることに。
二人きりになった家の中で芳野は、自分の事を携帯で撮っていなかったかと、橘高に聞いてくる。

という話でした。
すーーーーっごい!!良かった!!!もうズッキーンっと来て、きゅ〜んっっと来る感じで、もうほんっとうに一生懸命な恋心が切なくて泣ける話でした。
橘高は中学の時に、男が好きだって事がクラスメイトにばれて、一回虐めにあっているんですね。だから、気持ちを知られるということが、怖くて仕方がない。好きな相手に、気持ち悪いと避けられること、周りの人間に後ろ指指されて傷つけられる事、一回経験しているからそれが凄く怖くて、芳野に絶対に気持ちを知られたくない。絶対手に入らないと分かっているから、携帯で写真を撮って、芳野の写真だけを自分の物にして、満足しているんですね。
この子が、芳野に声を掛けられたり、写真の事を言われる度に、真っ青になって緊張するんですが、なんかもう、一緒に緊張してしドキドキして、悲しかった。だってそんなにまでも隠さなければいけない、知られたらいけない恋心なんて、切なすぎるじゃないですか…。人を好きになって、その気持ちを謳歌できないなんて…知られるというそれだけの事に、こんなに怯えなければいけないなんて、あまりに可哀想だ。
それで自分の気持ちがばれそうなのを誤魔化す為に、芳野に自意識過剰なんじゃないのかって言っちゃうんですよね。その自分の言葉に今度は自分で傷ついて、声も出せないって。なんかそういう…感情の、小さな心の動きが、いちいち全部表現されてあるんですよ。すっごい細かいんですよね、須磨子さんのマンガって。一見大雑把なようでしょ、でもすーっごい繊細なんです、上がったり下がったりの心模様が、誤魔化さずに逃げずに描いてあって、でもタッチが凄く優しいので、棘棘しくはないでしょ、ここだよなあ、須磨子さんの魅力。ほんと1ページ読む度に良さを再確認です。

橘高の気持ちは、まあ芳野にばれていた訳だけども、…っていうかばらしたゆいこの可愛さったらなかったんですけど、それは置いといて、芳野が本当にいい奴でちょうキュンとしました。
気持ちを隠していたこと、そこを突っ込まれても否定したこと、だけど結局全てを知られていて、そして自分の思いが成就してしまったこと。色んな思いがいっぱい詰まった、最後の橘高の涙でした…もう何回も言うけど、号っっ泣!!ボロボロに泣きました、すーっごくキュンとしました。

それから二人は付き合い始めるんですけど、その二人のいろいろが書かれてある二話目も三話目も、凄いよくって凄い泣いた。
橘高はやっぱりどうしても過去のトラウマから、周りにばれるのが怖い。嫌な事がたくさんあって、自分がそんな風に恋愛して彼氏ができるなんて、そんないい事があるんて思ってなかったから、いつかこの幸せは壊れるんじゃないないかと、いつか終わってしまうんじゃないかと、幸せすぎる今が怖い。
幸せを怖がってナーバスになってしまう心と、あとエッチしたいというありふれた欲望…。行ったり来たりするこの十代の恋心が、凄くいいんですよね、なんていうか…うまく言えないけど、凄く生きている感じがして。等身大で。
それに、それでもやっぱり、まったりのほほんとしていて、和むし笑える。"幸せすぎて寒気がする"って橘高…。あまりにあまりなんで、本人にとっちゃ大問題だけど、やっぱ笑っちゃうよな。

あと中学時代、橘高が好きだった相手…橘高のトラウマの原因の奴。あいつ現れた時の橘高見ても泣けた…。凄く痛々しくて。ガチガチに強張っている橘高を見て、自分のした事を、きっと彼は思い知っただろうと思うよ。被害者の気持ちは、加害者には分からないよな。でも救いは、彼がその事をずっと気に掛けていたって事で、年月経って街で出会って、声を掛けずにいられない程には、橘高の事を忘れていなかった。彼に対する罪悪感を持ち続けていた。
…ホッとした。橘高本人にとっちゃ、今更って事だろうけども、でも、忘れられているより数倍いいと思うんだよな。橘高が、今の恋人の芳野のお陰で…彼のくれたストラップを握り締めて、目の前の男を許せたことが…実際許せているのかどうか分からないけど、少なくとも橘高のその言葉で、彼の方は救われた筈でしょ、ずーっとその事に囚われていたなら。彼を救った分だけ、橘高が強くなったというか、橘高自身、中学時代の出来事から一つ抜け出せたというか、乗り越えたって事になると思うんですよね。だから凄く良かったと思う。どういうやり方であれ、どういう思いであれ、過ぎた事は過ぎた事だからさ。自分の中で如何に決着をつけるか、だけが問題なんで。橘高は一つ、決着つけられたと思う。
そうなれたのは、やっぱ芳野の存在が大きいと思う。味方がいてくれると思う事は、思いの外自分を強くするよな。

あといきなりヘチマとか…おかしいよなあ、須磨子さん。なんでそこでいきなりヘチマ。こういうアイテムが、和ませるんだよなー。
しかし本当に、芳野は優しい、いい男でした。
いい話だったなあ…。もっともっとこの二人の話が読みたかった。

同時収録、光る男…っていうのが、これがまた泣けたーっ
もう泣けた、凄いキュンとした…。モデルみたいにカッコよくて女の子にもモテるのに、なんか気が弱くて優しくて…そういう男が常に自分に付きまとってくる。常に自分の周りをうろうろして、自分ばかりを見ている。ついついイラッとする、意地の悪い事を言ってしまう。
という関係の友人同士の話で、えらいキュンとくる短編でした。
欽ちゃんカッコよかったなあ。栗が一生懸命欽ちゃんに纏わりつくのが…凄くもてるのに、欽ちゃんの反応だけ気にして、欽ちゃんに褒められたら真っ赤になって喜んで、一途な気持ちは垂れ流しで、胸が痛かったです。短いページだけど、ほんとよかった。
勿論栗が受だよね。ほんと私、雁須磨子さんと受攻タイプが一緒なんですよね、こういうの快感じゃないですか。背が高い方が受、とか年を取っている方が受、とか、そういうのが好きなんですよね。

あとオセロの話も面白かった、攻の奴の無表情が笑えた。なのにカッコいい。俺がそれしきで負ける訳がないって、言う事だけでっかいな。いちいちオセロで勝敗決めなきゃ何にもできないなんて、優しいつうか気が弱いつうか、可愛いとこもあるみたいです、この二人可愛かったな。

珍しくおっさん攻が一個あったんですが、でもこれも可愛かった。ジェネレーションギャップを埋めようと必死な二人が可愛かった。必死に見えないけど、意外に必死。それは恋心ゆえですね、可愛いな。

幼馴染みの話は前何かで読んだ。
幼馴染みの男の子、凄い怖くて何考えてるか分からないうえに、受の子はなんか足りない風味でなんなんだろう…と思いながら読んでるのに、最後の最後に泣かせるんだよなあ。
ゆう君の天真爛漫さ加減、ちょっと笑えるけど、かわいいよな。

も一個おっさんの話。これも前雑誌で読んだ事があったんだけど…これを受攻考えた事なかったな。でもこれさすがにおっさん攻だろうなあ。
本当に全然カッコよくないおっさんで、さすがの須磨子節だったよ。こんなおっさんをずーっと好きだと言っちゃう若い子、いいですよね。どんな風にふられたのだろうと、ちょっとそこを読んでみたいです。

電車で再会する先輩後輩同士のサラリーマンの話。
これも前雑誌で読んだ事があったんですが、これ雑誌で読んだ時から凄い好きだったんですよね、コミックスに入ってて嬉しい。
高校時代、自分がこっぴどく振ってしまった後輩に、年月経ってサラリーマンになってから電車で再会する先輩。先輩の方は、冷たくふってしまった後輩の事を、何年経っても忘れられなくて、偶然再会してしまったのをいい事に、これでもかと期待する。彼が自分をまだ好きなんじゃないかと、そして四年前に振ってしまった恋を、今度こそ、と。
要するにきっと、忘れられなかった年月で、彼への恋心を育てていたようなもんだと思うんですよね。会ってすぐ、彼から何も言われていないのにも関わらず、彼に恋してしまうなんて。
でも事実はどうかというと、忘れられていなくて、ずーっと彼を好きだったのは実は先輩の方だったり…。
私この話、何だか後輩の子が凄く可哀想で。好きだった先輩に告白したら拒絶されて、それから好きな男追いかけて上京してきて、それが地元で有名な話になってるって…。どういう青春時代を送ったのであろうか。後ろ指指されながら、必死に恋をしていたんだろうと思うと、切ない気持ちになってしまう。それでもきっと、先輩の事は嫌いになれなかったんだろうなあ、最後の泣き顔見ると。
先輩が自意識過剰に気付いて、真実を知った後、顔つき変わってましたよね。今度ははっきりと自分から気持ちを伝えて、一皮剥けたっていうか、カッコよくなってました。四年前あんなに逃げた人だったのに。
思い込みが恥ずかしく、恋心がみっともなく、何だかちくちくするような話ですが、凄い好きです。その恥ずかしさやみっともなさこそが愛しいというか、それこそが恋という気がします。

えー…とにかく素晴らしい短編集でした。
ほんと、恋恋恋!!って感じでした、これぞ恋です、これこそが恋!
雁須磨子さんのBLをこれでもかと読めて、凄く凄くすごーく幸せでした。

はー…なんか時間掛かったなあ…。



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Catergory in [comics : か]雁須磨子 comments(0) -
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