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幸せになってみませんか? * 腰乃

腰乃さんの待ちに待った新刊です、嬉しい!思い起こせば二日くらい前、この一冊が読めない事で私がどんだけ拗ねたと思うのか…。堪え性がないにも程があるよな、いい加減にせんといかん。

まあしかし読めました、ほんと嬉しかった。そしてやっぱり凄く面白かった!
隣りの 』が出たのは一年以上前で、きっとあの一冊でかなりのファンがついた筈ですよね。なのにそれ以降一冊も出ないので、本当に待ちくたびれました。やっぱあの下品さ加減がなかなか高いハードルなのだろうか…。

今回の表題作の一回目は雑誌で読んだ事があったんですが、続きを知らなかったので、道のり遠そうなあの二人が、何とかうまい具合に納まっていてくれてホッとしました。
腰乃さん、やっぱエッチシーンの卑猥さというか生々しさというか下品さというかは、ほんと突出していると思うんですが、エッチシーンじゃないところにもいっぱい魅力があると思ってて、確かに凄く癖はあると思うんですよね、でもそれも味になっていると思う。この独特なテンポとか、予想される筋道を少しだけ裏切られる感じとか…あくまで少しだけ。そういうのが読んでてワクワクするというか、凄く楽しい。何が起こるか、それをどう見せてくれるのか、予想できない楽しさがあると思う。
それからほんと気持ち部分が、意外な程繊細なところを突いていたりするんですよね、そういう所にほんの少しリアリティがあるように思うし、あとこの個性的な絵も好きです、シンプルな絵ですよね、書き込まれてない感じが好き。けど下半身は異様に書き込んである感じのこのギャップ…。あ、そこそんな濃いく描いちゃうんだ?こっちこんなに白いのに…?みたいな、そういうギャップがまたいいですよね。
とにかく腰乃さん、個性的。大好きです。

以下ネタばれます。



表題作、やっぱこの、持って来る題材も、全く予想しなかったところから来るのが凄いというか…。タチでオネエ言葉のサラリーマンって…。これを初めて雑誌で読んだ時に、ほんと何が出てくるか分からない感じに凄くワクワクしたんですよねー。
40歳を超えた真面目で堅物、融通の利かないサラリーマンの黒岩さん。長年付き合った彼女にプロポーズした夜に手酷くふられ、やけ酒を飲んでいた店で、隣に座っていたのは、これまたたった今彼氏に振られたばかりのオネエ言葉の青年、二子川。二人とも失恋して、相当酔っ払っていた所為もあり、気が合って話の流れで何故かそのままラブホテルへ。ホテルで飲んで、ベロベロに酔っ払った黒岩さんは、彼女に突っ返された婚約指輪を、二子川に上げてしまう。ところが、そんな風にたくさんの鬱屈を抱えている、羽目の外し方さえ知らないノンケのオジサン、黒岩に、ゲイの二子川は気持ちよくしてあげる、と言って迫ってくる。そうなって初めて酔いも冷めて、男とラブホテルへ来ている現状に青ざめる黒岩だけど、正気に返った時には既に遅く、黒岩さんの下半身は二子川の意のままに…。

という話です。物凄く普通のサラリーマンの見た目をしているのに、酔っ払ったり好きな人の前に来ると、途端にオネエ言葉になってしまう二子川。…意外なキャラだったほんと…。しかしこの男が強引なんだけど繊細で優しくて一途です。あまりに必死に迫っているので、なんだかちょっと不憫だった。
ノンケで融通の利かない、ただのオヤジだった黒岩にしてみれば、ほんといい迷惑かもしれないんだけど、二子川に好かれた事で、彼女に振られた痛手は随分軽くなっただろうし、二子川が尽くしてくれるので、随分いい思いをしてるんですよね。
黒岩が気まぐれに上げてしまった婚約指輪だけど、これをずーっと二子川がしているんですよ。小指の端っこにずっとつけていて、黒岩はそれを返してくれと言うんだけど、二子川は返さない。二人は偶然にも同じ会社に勤めていたので、日中にも会う事があるわけだけど、黒岩はあの夜の事を忘れたい、自分はゲイではないし、あの夜は酔っ払って正気を失っていた、とにかく指輪を返せ!と。
しかし、そんなもん、忘れたいならもう二子川に構わなければいいんだし、捨ててもいい指輪なら、外せとか返せとか言って、二子川に構う必要もないと思うんだよね。放っておけば良い。
なんでそんなにもこの指輪一個に拘っているのかと思っていたら、それはやっぱり、これを見る度に、甲斐性のないつまらない自分、他人を信じられない自分、3年も付き合った彼女に振られた自分、そういうのを思い出すからなんですね。それと、振られてしまった事のショックを、二子川に突っかかることで誤魔化していたんだ、と。そういう感じの事を黒岩が言っていて、それに私、なるほど〜と、ちょっと納得しまして、黒岩の人間性が、凄く見えたような気がしました。気持ちを動かす為にとってつけた都合のいい理由だとは思わなかった。ちゃんと、黒岩の心の動きが分かる理由だと思った。
それならば、二子川には付け入る隙がある。
…まんまと付け入って、なんとかかんとか口説き落として、黒岩さんの恋人的位置に納まっているようですけども。

でも、二子川が必死に口説いた次の日の朝、やっぱりダメか…って思うところ、あそこ切なかったなあ…。ずっと、凄くこう…人の気持ちを引き摺るのに長けている人って感じがして、黒岩なんか流されやすくって…というか、恋愛とか人付き合いのスキルがなさ過ぎるんだと思うけど、とにかく二子川の手管にあっという間に落ちちゃうんですよね。二子川が凄くうまいんですよ。疲れているとか落ち込んでいる時に、ひょいっとその心に寄り添うような事を言う。凄くさりげなく。冗談に紛らせて核心を突いといて、相手がよろけたところで、さっと自分の本音を出す。とにかく上手い、翻弄するのが。それも、飄々としているように見えるし、常に余裕があって、ぶれないように見えるんですよね。
そんな男が、何があっても動じずに余裕あるように見えた男が、どうやっても黒岩さんに応えてもらえないってなって、寂しそうにベッドでため息をついたり、寂しそうに改札から出てくるところが凄くよくて、やっぱり自分ではダメなのか、みたいな事を言いつつ、あっさりとあんなに返さなかった指輪を返してしまうのが、何だか凄く切なかったです。これまで凄く凄く頑張ってたんだろうなあと思って…。まあ、性格もあるだろうけど勿論…。めげない性格だし、あっけらかんとした人ではある。
そんな風に、ガンガン迫っていく二子川もよかったし、迫られて気持ちよくて迫られて、いつのまにかズルズル流されていく黒岩さんも良かった。ほんと、見事な流されっぷりでした。可愛かった。

もう一個の話、純情な高校生と、下半身緩すぎるセックス好きのサラリーマンの話。これも凄い面白かった。
コンビニバイトをしている高校生の大滝は、毎日通ってくる綺麗なサラリーマンの人に恋をしている。顔を見るだけで嬉しい、声が聞こえるだけで嬉しい、毎日顔を見て、もっと話したいし、もっと色々知りたい、どうやったらもっと仲良くなれるだろう、どうしたらもっと近づけるだろう…と、大滝は一途に純粋に片思い中。
が、偶然にも傘を持たない彼を家に送るという幸運に恵まれたその日の夜、言われるままに家に上げてもらい、言われるまま乗り上げられて、何だかエロい関係に…。高島と言う彼は、何だかとんでもないビッチ。挨拶もそこそこ、大滝の人となりも全く知らず、好きとか嫌いとかなんていう気持ち部分の話なんか全く理解できないとでも言いたげに、とにかく、今付き合う相手がいなくて欲求不満だからセックスしよう、と。17歳の純情な大滝は、そんな高島のテンションについていけない。その一夜で早速彼との付き合いは及び腰になるんだけど、彼の方は積極的にメールアドレスを教えてくれるし、コンビニバイトが終わるのを待っていてくれたりする。しかしそんな風な積極的にも関わらず、彼の目的はどうやら、その後ヤル事だけ。やれりゃ誰でもいいなら自分じゃなくてもいいじゃないか!と、高島との付き合いを断とうとする大滝なんだけど…。

という話で、あたしはいつ淫乱サラリーマンの高島が、大滝に愛を囁いてくれるのかと、今か今かと待っていたのに…結局高島は最後まで大滝をからかってばかりだった…。
がしかし、愛情表現は著しく間違っているような気がするが、高島はそれでも一応、大滝が好きなんだと思った。だっておかしいじゃん、ヤルだけの相手ならそれこそ、この人こんな淫乱で美人で慣れているなら幾らでもいるんじゃないの、事実大滝に放って置かれた数日間で早速浮気してた。
それでも、抱いてもくれない高校生なんかにずっと自分から連絡取って、彼を待ったりする程度には、関係を切りたくないって思っている程度には、大滝の事好きなんだろうなーって思いながら読みました。
あまりに高島が、やりたいやりたいばっかりの人なので、大滝もやけにストイックになってしまって、何だかえらい長い事、最後までちゃんと高島とセックスしないんですよね、早くやっちゃえばいいのに。
高島が他の男と浮気をしているってなって初めて、今まで及び腰だった初心い高校生、大滝が必死に彼を欲しがる。大滝って子は、時間の掛かる繊細な子なんだろうなあ。心が折れそうって言いながらも…ほんとちょっとかわいそうだったけど、それでも何とか高島さんと付き合ってたから、本当に高島さんの事は好きだったんだと思う、可哀想に、初めての恋人がこんな手ごわい相手だなんて。
高島さんが浮気しているってなった時の大滝がこれまた、予想外で面白かったなあ、凄いストレートに相手に気持ちをぶつけに行くんですよね、回りくどいこと一切なくて、直接全部ぶちまけている。それで、怒るのかと思ったら、どっちかというと反省して相手にすがり付いている。…いい子だなあほんと。
今からセックスするんじゃダメか、もう遅いですかって聞きながら高島さんを押し倒す大滝の必死さが本当に良かったです、なんかゾクゾクしてしまった。そしてそんなにも頑張ったのに、情けない結果に陥ってしまっているというのが、これまた大滝の不憫なところですが。
結局最後まではおあづけでしたね〜できればこの続きをどっかで描いてくれると嬉しいのになあ。大滝が最後までできる日を読みたいです。

後は『隣の』の中に入っていた、くたびれた上司とメガネの部下の話も、ちょっと入ってました。

全部凄く新鮮で面白くって、楽しかったです。
ほんと、色んな所が凄く独特な作家さんですよね、もっともっと読みたい。



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Catergory in [comics : か]腰乃 comments(0) -
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