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ブルームーン * 森脇真末味

森脇 真末味
ブッキング
¥ 2,625
(2003-12)

私が森脇真末味さんを知って読み始めたのはたぶん十代後半、高校生以降だったと思います。その時既に、ブルームーンの連載は終わっていて、コミックスは5巻完結まで出た後だった。本屋に行く度に気になっていたこの5巻分を、たぶんある日意を決して一気に買ったような記憶があるんだけど、読んだ事もない知らない作家さんの本を、よくもいっぺんに5巻買ったと思います。あの頃の私の勘たるや…。それに、これは当初プチフラワーコミックスというレーベルだったんだけども、ここの本で外れは一切なかったんです。絶対に面白かった。だから、作家さんというよりも、レーベルを信じて買っていたような記憶があります。
で、結果的にこのブルームーンから森脇真末味さんを好きになって、色んな本屋で少しずつ、勿論古いものは古本屋にしかないので、古本屋に通っては集めに集めて…でも未だに手に入ってないものも幾つかあるんですけどね。最近はやっと文庫版にもなって少しは出ているので嬉しい限りです。
できたらこのブルームーンも文庫版になってもう一回出して欲しいです。そしたらもっと色んな人が読めるし…あたしも新しいの欲しいけど、だって上の奴高すぎるよね。それにサイズも大きいし、なんで文庫版が出ないんだろうか、こんな名作中の名作なのに。

とにかく私はこのブルームーンが大好きです。とにかくもう人に薦めたくてしょうがない、だって本当にいいから!双子の話なんですが、今までこれを超える双子話には出会った事がないです、そのくらい私はこの話が好きだし、とても良い作品だと思っている。

この話の主人公、英一と英二が初めて出てくるのは

踊るリッツの夜 (PFビッグコミックス―森脇真末味傑作集)

この本の同時収録、『TIME』って話。その次が

ゼネツィオの庭 (PFビッグコミックス―森脇真末味傑作集)

こっちの方は一冊ほとんど英一と英二の話です。
それからブルームーン1〜5巻が始まるんですが、ブルームーンを読むならぜひともこの最初の二冊も一緒にオススメです。もしかして復刊の方には全部一緒に入ってるかもしれないんですが、持ってないので分からない。一緒に入ってるんならいいのにな。
このブルームーンの前の英一の話も凄く重要な良い話で、英一の詐欺師ぶりとさびしんぼうぶりが描かれているんです、ブルームーンと同等に好きです。

どういう話かというと何と言うか凄く一言では説明しにくいんですが…。
親に捨てられた双子の兄弟が、詐欺師やらヒモやらしながら何とか生きていく話なんですね。戸籍がなく、住む場所もなく、苗字もない。出生届が出てないので、この二人がここに存在していると証明するものが何もない。
二人は二人きり、精神を病んで入院している母親の入院費を払うため、それから生きていく為に、人を騙して金を作って、逃げる生活。凄く大人びているんだけど二人とも未成年。十代らしい素直さと無邪気さを持っている弟、英二に対して、兄の英一は何とも言いようのない繊細で魅力的で男です。
大人になる前の少年特有の手足の細さに、人形みたいな綺麗な顔、子供の肌をしているのに、目つきはひどく大人びていて、人の心の傷を見抜く。皮肉屋で気分屋で乱暴者で冷酷で、とにかく扱いづらい。だけど心の中はとても繊細で、弱くて、ふとした瞬間に何も知らない子供のような表情も見せる。物凄くアンバランスな色気のある子で、男女問わずとにかくモテる。立っているだけでおっさんが声を掛けてくるというくらい、月一で痴漢に会うというくらい。
英一は詐欺やヒモや美容師をして働いて弟を養っているんだけど、弟は一切何もしない、働かない。無邪気で屈託がなく、だけど英一よりは常識を持ち合わせている。
英一と英二、二人は全く同じ顔をしているのに、顔つきが全然違うんです、表情が違う。

根無し草のような二人が行く先々でトラブルを起こしながら住む場所を変えていくという話なんですが、重要なのは、この二人の間に本当は何があるのか、だと思うんです。
喧嘩をしながらいつもいつも一緒にいる二人。同じベッドで幼児のようにくっついて眠る二人。文句を言いながら、おまえはバカだ嫌いだお荷物だと言いながら、英一は決して英二を捨てないし、英二は決して英一に逆らわない。この歪な関係がどこから始まって、どこに向かうのかっていう事が、とてもとても大事なテーマなんですね。二人にとってお互いとはどういう存在で、一体何なのか。二人の間にある、本当のこと。英一の心のうち。
子供を顧みない母親、彼らを捨てた父親、彼らを養った遠縁の男、英一が掛かっている"病気"のこと。徐々に現れるそういう背景を読み解きながらもどかしい思いで前へ進む。
すると、何だかこの歪な兄弟が…輪郭がはっきりしなかった二人の人間の姿が、徐々に見えてくる。自分なりに、英一が何故こうなのか、という事が、読んでいる内に分かってくるんです。
本当に、最終巻は涙が溢れて、胸が痛くて…何だか私は、これだけ好きでも、あまり読み返したくない感じがずっとしています。なかなか抜け出せないんです、これ読むと。

私はずっと英一はバイだという認識だったんだけど、久しぶりに読み返してみると、そういう訳でもないのか。でも性的に、男と女を分けて受け入れているという印象がないんですよね、詐欺師なので、金をくれたり自分達の有利になるなら男とでも寝るし触らせるし、女相手の方がそりゃ勿論多いんだけど、男女の隔てなく接している気がする。…いや、金をくれるカモとして扱う分には全く男女の差がないのか。もしかして男には父親を求めているように甘えて接して、女には母親を求めているような瞬間もある気がするなあ。でも男に痴漢にあったりしたら凄い乱暴にやり返したりするから…とにかく男にもモテていていつも何かしらされているので…あまりにモテるせいだろか、まあとにかく、なんかこう、色気があって常に他人に執着されているんですよね。

あと、実際この兄弟の生い立ちとか背景とかは凄く暗いもので、苦労して生きていて、詐欺なんて事やって、軽犯罪ばかりやっているような二人なのに、この二人には汚れた黒い空気が全然なくて、話自体も何だか明るいんです。太陽の下っていうよりも、月明かりって雰囲気はあるけども。
…それはこの双子が見せるアンバランスな子供らしさと、それから森脇真末味さんの…なんていうの、この…絶妙なユーモアのセンスがなせる業ではなかろうか。ギャグというほど笑える訳ではない、だけど言われると参った!と降参したくなるような皮肉なユーモアが満載なんですね、ちょっと考えてみてから、やられた!って思うような、一筋縄では行かないブラックな嫌味や皮肉がとにかく散りばめられていて、…何だかからかわれているみたいな感じがするんですよ。騙された事を悔しく感じない、騙されてなお、惹かれて止まないいかさまにあっているような気がする。
凄く独特な印象を残します。魅せられるって感じです。

とにかくそういう、私なんかが幾ら説明したところでこの作品を、森脇真末味さんをうまい事説明なんかできないです、機会があったらぜひ、ぜひぜひ手に取ってみて下さい、森脇真末味さんを読んだ事がない方には、きっとすごくその言葉のセンスや言い回し、説明の少ない場面展開を、新鮮に感じることができるんじゃないかなと思います。

これは私が持っている古い方のブルームーンです。5巻完結で、巻によっては安く手に入る物もあるみたい。でも5巻は高いなあ…。↓↓↓

Blue Moon 2 (プチフラワーコミックス)
Blue Moon 3 (プチフラワーコミックス)
Blue Moon 4 (プチフラワーコミックス)
Blue Moon 5 (プチフラワーコミックス)

復刻版↓↓↓

ブルームーン (2)
ブルームーン (3)

でも高すぎるよほんと。買えない。



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万物は原子より成るということを * 秋里和国

ちょっと懐かしいマンガを実家から持って帰ってきました。久しぶりに読んだけど、何回読んでもいいなあ。
秋里和国さんと言えば、今みたいにBLが溢れている世の中ではなかった時代に、率先して男同士の恋愛を描いてくれていた方です。このPFコミックスからは結構そういうのが出ていたので、私はPFコミックスが大好きだった。秋里和国さんと言えば『TOMOI』ですよね、当時はBLなんていう言葉はなかったと思うんですが、なんか男同士恋愛と言えば必ず『TOMOI』の名前が挙がってきていたように思う、と言っても今みたいにネット時代ではないので、世の中のホモ好き女子がどのように言っていたかは知らないんですが、私の仲間内ではそうでした。TOMOIの後に続編が出てて、タイトル忘れたけど、二冊とも名作って言われていた。……けど実は私自身はそんなにも感銘は受けてなかった気がするけど…。あまり読み返してないって事でも分かる。

この『万物は原子より成るということを』が出たのはそれから更に相当年月が経ってからだと思います。93年らしい。なるほどあの頃か〜…。
とにかく友達と、この本の素晴らしさを言い合った思い出があります。当時のBLがあまりにつまらんかったので、これが出た事が凄い嬉しかったんです。この本はゲイの話なので…と言っても今みたいに、"ゲイが出てくる話"、と"BL"を分けたような考え方はしてなかったと思うし…私は未だにそこを分けるのがイヤなので分けたような言い方は絶対しませんが、当時はそこを分けるものだとも思っていなかった。今でもイヤなんですが、BLはこういうもの、とカテゴライズしておらず、男同士の恋愛マンガを描くんだから、ここが基本だろうという事をとにかく強く思っていた、友達とよくそう言ってました。この本に書いてある事が基本中の基本だって思っていた。

とにかく当時本当にありがたく読んだ本でした、今これを敢えてマンガにしてくれて嬉しい、とBLが世の中に広まりつつある93年当時、私は強く思っていた。
勿論凄く面白いマンガで、物凄く読み甲斐がある。私は秀逸だと思ってます。
知らない人にぜひぜひオススメしたい男同士の恋愛マンガです。
検索したけど、もうないんですね、当たり前か。古いマンガだもんなあ。
あと私はこの本のタイトルが大好きなんですよ。『万物は原子より成るということを』って、凄く良いタイトルだと思いませんか。

で、内容ですが、馬術でオリンピックを目指すゲイの青年が、年上のゲイの人と恋に落ちて、彼のしがらみと自分のしがらみを乗り越えて、恋を選べるか好きな人を選べるかという話なんです。



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